その三

「一応知ってるが、俺からは言えんな。 いずれ本人が話してくれるさ」

事情を聞きたそうなみんなの視線に、横島は少し困ったように言えないと告げる

下手に第三者が教えて、同情するような流れになるのを避けたい横島の考えがあった

中途半端な同情が決していいものではないと考えていたのである


「横島さんは本人から聞いたのではないのですか?」

「いや違うよ。 ちょっと気になる事があったから調べたんだ」

横島の言葉から夕映はネギから直接聞いた事でないと知り少し驚くが、よく考えたらネギの行動には気になる点が何度かあるし調べても当然だと思う

結局、その日はそれ以上その話はされる事なく終わった



次の日、中等部ではネカネが臨時講師として赴任してネギの従姉妹だと紹介される

突然の臨時講師に様々な噂がされるが、噂自体は比較的好意的だった


「あんたの荷物思ったより少ないわね」

同じ日の放課後、明日菜と木乃香の部屋ではネギの荷物の整理が行われていた

荷物と言ってもダンボールに数箱程度であり、引っ越しと言うほどではない


「明日菜さんと木乃香さんには、本当にお世話になりました」

荷物を纏め終わるとお茶で一息つくネギと明日菜と木乃香だが、ネギは自分が生活していたロフト部分を見つめ少し寂しそうな表情をする

いろいろあり大変だった日々だったが人の温もりに飢えていたネギにとって、明日菜と木乃香はかけがえのない存在になっていたのだ


「ネギ君、お姉さんと一緒に暮らせてよかったわ~」

ネギの寂しそうな姿に木乃香も若干の寂しさを感じるが、それ以上にネギがネカネと住める環境にホッとしている

最も短かで第三者視点でネギを見ていた木乃香は、このままではネギにとって良くないとずっと心配だったのだ

明日菜と木乃香はネギが邪魔だとか負担だとは思わなかったが、私生活部分のネギは年相応の子供であり肉親から離しておくのがつらかったのである


「あんまり大人ぶったらダメよ。 アンタは子供なんだから、それを忘れちゃダメなのよ」

一方寂しさという点では、木乃香よりは明日菜の方が感じていた

変に大人ぶる割には子供っぽさが残っており、危なっかしいというか放っておけなかったのである

ネカネと暮らせる環境で、ネギの変に危なっかしいところが治って欲しいと願ってやまなかった


「明日菜さんこそ、僕が居なくなってもしっかり勉強して下さいね」

「わかってるわよ! アンタこそ無茶したらダメなんだからね!!」

ネギを心配していた明日菜は、逆に勉強の事で心配された事実に少しムキになり言い返す

口げんかとまではいかないが、いつもの二人らしい姿を木乃香はニコニコと笑顔で見ていた

その後荷物運びに横島やネカネやアーニャが手伝いに来るが、横島と明日菜とネギがダンボールを運ぶだけで引っ越しは終了する

そのまま横島達はネカネとアーニャの買い出しの荷物持ちをするなど手伝ってその日は終わった

特に来る予定が無かったアーニャのベッドや生活雑貨などが足りなく、買い出しはかなり大量になっていたのだ


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