その三

「貴方がネギをスケコマシにしたのね!」

二人のケンカを止めに入った横島に、何故かアーニャは怒りの視線を向ける

どうも横島がネギをそそのかして、女ったらしにしたと勘違いしたらしい


「はあっ!?」

子供の痴話喧嘩に巻き込まれた形の横島は、違うと言わんばかりに首を横に振るがアーニャの追求は止まらない


「ネギはあの日から勉強ばっかりしてたのに、絶対貴方のせいよ!!」

「ちょっと、アーニャちゃん!? 横島さんはあんまり関係ないんだけど……」

目に涙を浮かべて横島にポカポカと殴り掛かるアーニャに、明日菜はたまらず誤解を解こうとした

流石に初対面の横島には魔法を使わないくらいの理性がアーニャにもあるようだが、それでも明日菜の言葉は聞かない

結局ネカネが落ち着かせて、明日菜とのどかが説明するまでアーニャは止まらなかった


「アーニャ、僕達の村の事は忘れてないよ。 あの雪の日の夜の事も…… それにみんなを元に戻せる可能性も見つけてある」

ようやく落ち着いたアーニャに、ネギは真剣な眼差しでかつての村の仲間達を助ける事ができる可能性がある事を告げる

その言葉にネカネとアーニャは、信じられないような表情を浮かべて見つめるしか出来ない


「ネギ、本当なの?」

「うん……、でも簡単じゃないと思う」

アーニャが真偽を問いただすようにネギにつかみ掛かるが、ネギは言葉を濁しつつ簡単ではないと告げるしか出来なかった


(恐らく横島さんならば村のみんなを元に戻せる。 僕がその魔法を覚えなきゃダメなんだ)

ネギは横島ならば永久石化を解除出来る事を確信している

しかし魔法界で誰も解除出来なかった永久石化を横島に頼む事は、ネギには出来なかった

横島が決して目立つつもりがない事実に、ネギは気付いている

結果ネギは、自分が永久石化を解除出来る魔法を横島に習うつもりだったのだ


「どうすればいいの!? 教えて!!」

ネギはこの場で詳しく語るつもりがないのだが、アーニャは収まらなかった

両親や村のみんなを救う可能性があるなら、アーニャはどんな事をしてでも助けたいと考えているのだ


「ゴメン、今は言えないんだ。 いろいろ難しい事もあるから慎重に進めないと……」

「だからどうすればいいの!? 私は信用出来ないって言うの!?」

アーニャの鬼々迫る表情にネギはオロオロしながらなだめようとするが、収まるはずがない

幼い頃に両親を失ったアーニャもまた、誰よりも両親を求めていたのだろう

結局ネギは、後日改めて説明するから今日は待って欲しいと言うしか出来なかった



その後横島宅で夕食を食べたネカネとアーニャは、ネギを連れて帰っていき

この日からネギはネカネと共に暮らす事になり、後日女子寮の荷物も運ぶ事が決まる


「横島さん、何かご存知なのですね?」

ネギ達三人が帰った後、夕映は言葉を選びつつ横島に尋ねる

アーニャの取り乱し方やネカネの辛そうな表情から何か重大な秘密がネギ達にある事に、その場に居た者達は気付いていた

その中でも夕映は、横島の無言な表情から何か知っていると確信を持っている


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