その三

それから横島は小太郎の妖怪としての部分を隠す変化の術がかかったお守りを作るなど、小太郎の就学準備を進めていく

空き室だった部屋の一つを小太郎の部屋としてベッドや学習机を用意するなど、小太郎が不要だと言う物まで用意していた

ただこの辺りは千鶴や夕映の助言に従っただけであり、他の子と同じ物は一応揃えるべきだとの事である

今後学校に通った小太郎がどうするかは不明だが、平均的子供と同じ環境は必要だという判断であった



そして千鶴達三人だが小太郎やネギの様子を見たいなどの理由を付けて、横島宅に来るようになる

結果的に小太郎を含めた四人には異空間のアジトを高度なマジックアイテムの一つだと説明し、出入りの許可を与えた事は仕方ない事だろう

一応横島宅内で見た物や聞いた事は外では魔法使いにも秘密だと言っておいたが、秘密にするには人数が増えすぎである

横島も秘密の完全な秘匿はそろそろ諦め始めていた

魔法球のような異空間を持つ魔法使いは一流の魔法使いではそれほど珍しくないと言うエヴァの助言もあり、魔法球と似たような物だと言う事で通す事にする

どちらにしろアジトの全容は横島と土偶羅しか知らないし、仮にばれても神魔界を相手に戦争する力があるなど誰も信じるはずがない真実だった

それにアジトの権限は全て横島にあるが、その横島ですら土偶羅が居なければアジトの維持すら出来ないのだから、ある意味他人にバレても第三者には絶対利用出来ない事なのだが



「凄いですね、魔法って」

「私は迷子になりそうだよ、ちづ姉」

「やはり先生はタダ者ではなかったのですね」

アジトに始めて入った千鶴達だが、三人は比較的落ち着いていた

ニコニコと魔法の凄さを実感する千鶴に、あまりの広さに迷子を心配する夏美、そして横島の特異性に薄々感づいていたあやかなど、反応は様々だがまあ普通の反応の範囲だろう


「ネギ、勝負や!」

ちなみに小太郎は人目を気にしないでいいと聞くと、ネギに勝負を吹っかけて早々に何処かに行ってしまった

横島が建物は壊すなと言った事から、すぐに見えないくらい遠くの場所まで走って行ってしまう

その後三人は木乃香達の修行を見学するなどして、アジト内の時間で一日程滞在する事になる


「プラクテ・ビギ・ナル 火よ灯れ」

初心者用の杖から初心者用の炎の魔法が灯ると、千鶴達三人は驚いたように拍手する

魔法を実演して見せたのは木乃香・夕映・のどか・まき絵の四人だ

彼女達が魔法の練習を始めてまだあまり期間が過ぎてないが、すでに初心者用の魔法は完全に習得していた

アジト内の霊的に優れた場所にある妙神山出張所の存在と、横島やエヴァの実力を考えれば当然の結果である


「ああ……、このままでは明日菜さんに差を付けられてしまいますわ」

木乃香達の成長と共にあやかが気にしていたのは明日菜の実力だった

魔法こそ習わなかったが、剣術や体術はメキメキと実力を上げている

加えて気や魔力のコントロールも横島の指導により続けており、元々同等だった実力は現時点でもすでに明日菜の方が上だった


「いや、そのね…… 魔法使いって結構危険に関わるからさ」

隠れて修行していた明日菜にあやかは詰め寄るが、明日菜は困ったように笑ってごまかすだけである

明日菜としてはあやかを危険に巻き込みたくないし、秘密絡みなため言えなかったのは仕方ないのだが……
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