その二

「それにしても…… 彼は何者なんだろうな」

一方明日菜達と帰っていく横島を見ながら、ガンドルフィーニはふと呟いていた

ヘルマンの力を考えれば神経質なほどの作戦だったが、人質が居た事を考えれば万全を尽くしても当然だとも言える

そして何より不思議だったのが、凶悪犯であるはずのエヴァが横島に従ってるように見える事だった

ナギの封印により大人しくしてる考えてるガンドルフィーニにとって、エヴァが第三者に従う事は考えられない事である

高畑は多少交流があるが、他の魔法使いや人間と一切関わろうとしなかったのだ


「とりあえずは、後始末だな」

いろいろ気になる事はあるガンドルフィーニだが、まずは事件の後始末が先だと小太郎を保護していく

他の魔法先生や戦闘には加わらなかった魔法使い達も、周囲の警戒の人員以外は解散となる



さて人質になったメンバーを連れて帰宅した横島の方は、帰宅後さっそく霊視により人質になった者達を調べていた

土偶羅が監視しているため可能性としてはほぼゼロだが、万が一を考えれば調べた方が安心である


「全員異常無いな」

予想通り人質は全員異常が無かった事に横島は一安心するが、夏美は今だによくわからない事態に混乱気味だった

流石に怯える事はなくなったが、目の前で起きた事態と自分の常識などの狭間で何がなんだかわからなくなっているようだ

残る人質で事情を知らないのはあやかと千鶴だが、あやかは今だに眠ったままだし千鶴は落ち着いている

まあ年の割に大人びていると言われるだけに、精神的に強いのかもしれない


「いろいろ聞きたい事もあるだろうけど、今日はひとまず眠るといいよ。 明日の放課後にでも説明しよう。 ちなみに俺の家は絶対に安全だから、さっきの奴みたいなのは入って来れないから安心するといい」

不安そうな夏美に向けて、横島はほんの少し言葉に霊力を込めて説明していた

言霊ほどではないが、多少の霊力を込めるだけでも説得力がまるで違う

夏美は自覚がないかもしれないが、本能的に落ち着くはずである

暗示や精神操作の類で落ち着かせる方法もあるが、夏美はそこまで酷い状態ではない


「ありがとうございます。 一つだけ今答えてください。 小太郎君は何処ですか?」

現状をある程度把握し始めている千鶴は聞きたい事がたくさんあるが、何より先ほど出会った小太郎が居ない事を心配している

何か自分達の知らない深い裏に気付いてる千鶴は、今回の事件に関わりある小太郎がどうなるか不安なようだった


「あいつはさっき居た人達が保護した。 いろいろ事情聞かなきゃダメだしな」

「ではそれが済めば会えますか?」

「……わかった。 明日の放課後に会わせるよ」

真っ直ぐに真剣な表情で尋ねる千鶴に、横島は内心驚いている

突然誘拐されて魔法やら魔族を見たにも関わらず、小太郎の心配を第一にするのは流石に驚きだった

見た目と共に内面まで人生経験も少ない中学生には見えないほどだが、それは口にしてはいけない事である


「みんなご飯やで~」

その後横島達は少し遅い夕食になり、ようやく一息つく事が出来ていた

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