その二

「さらばだ……ネギ君。 また会える日を楽しみにしてるよ」

ネギの目の前でヘルマンは静かに消えていく

その重苦しい空気に、魔法先生達は見てる事しか出来なかった



「結局逃がしちまったな。 まあいいけど……」

放心状態のネギに誰も動けない中で声をかけたのは横島である

ヘルマンを逃がしたのは不安要素ではあるが、結局のところ何も知らない下っ端魔族を殺しても何も変わらないだろう

それよりはヘルマンを生かしたまま裏を探るのも悪くはない

まあ横島が動く訳ではないし、後始末は魔法使いに任せるのであまり関係はないが……


「横島さん……」

「とりあえず、帰ってゆっくり休め。 寝れないなら家に来てもいいしな」

落ち込み気味だが中途半端に感情を押し殺してるネギに、横島はあえて何も言わないが内心ため息をはく

やはり何もかもが中途半端なのだ

今回のネギの行動も反省すべき点は多いし、一歩間違えれば人質ごとみな殺しになってもおかしくない

そして一番の問題は、エヴァの時や修学旅行の時の過去の教訓があまり生かされてない事である

勝てる見込みなど何もないのにただ敵の言う通りに動くのでは、殺してくれと言ってるようなものなのだ


(こりゃなんとかしないとダメだな)

人としての根本的な経験が足りないネギに、横島は今後の方針を変える事が必要だと考えていた


「それじゃ、皆さんお疲れさまでした。 人質になった子達は今晩は俺が預かります。 一応妙な魔法でもかけられてたらまずいので」

「ああ、わかった。 そっちは任せよう」

放心状態のネギは我に帰ると、人質だった明日菜達の元に行き無事を喜び合う

そして横島は人質になった生達を今晩預かる事を告げて、後は魔法先生達に任せる事にしていた



「みんな凄いね~」

「あの人弱かったのかなぁ?」

一方離れた場所から全てを見ていたまき絵と木乃香は、あっという間に終わってしまった事に驚いている

横島がわざわざ魔法使い達を集めた事からかなり危険だと思っていたのだが、終わってみればあまりにもあっさり片付いたので拍子抜けしてる感じだった


「見た感じほど弱くはないのう。 ただ、相手が力を出す前に終わらせただけじゃよ」

「おじいちゃん!?」

「学園長!?」

いつの間にか二人の背後に浮いていた学園長に、木乃香とまき絵は驚きの声を上げる


「相手が力を出す前に倒すのが一番確実じゃからのう。 人質も無事なようだしよかったわい」

そこまで話すと学園長は、二人に手を振り先に帰っていく


「おじいちゃんも、見てたなら手伝えばええのに……」

見物だけして帰っていく学園長に、木乃香は若干不満そうである

子供であるネギまで戦ってるのに、ただ見てるだけの祖父に少しがっかりしていた



「皆さん遅いですね~」

「きゅん」

そして横島の家では、留守番していたさよとタマモが暇そうにテレビを見ていた


「やっぱり私がご飯を作るべきじゃ……」

「コンッ!!」

みんな帰って来ないから自分が夕食を作ると言い出したさよを、タマモは焦った様子で必死に止める

最近まで幽霊だったし、ドジっ子のさよが一人で料理を作るのはあまりに危険だとタマモは気付いていた


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