その二

「降伏しろ。 素直に事情を話せば、命まではとらねえよ」

初めて動揺を見せたヘルマンに、横島は淡々と降伏を進める

相手が誰であれ、例えそれが無意味と理解してても横島は降伏勧告をした

戦わないで終わらせれるならば、それが一番いいと考えるのは今も昔も変わらない


「契約があるので降伏は出来ないのだよ。 悪いが最低限の仕事はさせてもらう」

その瞬間、ヘルマンの姿が人から魔へと変わった


「えっ…………」

その瞬間、ネギは固まっていた

そして横島やエヴァ達もまた驚きの表情である


「喜んで貰えたかな、いい顔だよ。ネギ君」

それはネギの過去において最も忘れられない姿だった

あの雪の夜にネギの村を壊滅させて、スタンと言う老魔法使いによって封印された魔族である

そして横島とエヴァがネギに弟子入り試験をした時に、幻術で見たのもこの魔族だった


「あなたは……」

「そうだ、私はあの日……」

震えながらなんとか言葉を紡ぎだしたネギに、ヘルマンは少し喜びの表情で答えはじめるがその言葉は途中で途切れてしまう


「うっ!!」

僅かな苦痛の声と共に、ヘルマンの肩からは血が流れていく

それが銃撃だと悟ったヘルマンは横島やエヴァ達を見るが、誰一人銃など構えてない



戦いは圧倒的だった

最初の真名の狙撃に続いて魔法先生の銃撃と魔法が四方からヘルマンに直撃すると、トドメには刀子の一撃であっさりとヘルマンは倒れてしまう

反撃する隙も相手の力を出す間も与えないほど徹底していた



「そうか……、魔法使いも来ていたか……」

全身のダメージで苦痛の表情のヘルマンは、たどたどしく言葉を発する

警戒してなかった訳ではないが、横島やエヴァに気をとられ過ぎていたのだと今更ながに気付くがすでに遅い


「人質まで取った貴様を黙って見てるはずはないだろ!」

ヘルマンを警戒しながらも囲んだ魔法先生達は、ヘルマンを警戒しながらも怒りの表情で睨んでいる

若い明日菜達を人質を取り、まだ子供のネギに危害を加えようとしたヘルマンに魔法先生達は怒りが収まらないようだった


「誰の差し金ですか?」

「契約者に関しては何も言えないのだよ」

刀子はヘルマンに刀を突き付けて情報を聞き出そうとするが、ヘルマンはそれに臆する事なく自らトドメを刺すように促す


「ならば……」

「待ってください!!」

刀子がトドメを刺そうとした時、止めたのはネギだった


「貴方は、あの日の悪魔なのですか!?」

突然の出来事に混乱気味のネギだが、ヘルマンに駆け寄ると震える言葉で聞きたい言葉を口にする


「ああ……、私はあの日召喚された中でも数少ない爵位級の悪魔だ。 トドメを刺したまえ、ネギ君」

まるで自ら滅びを願うようなヘルマンを、ネギは呆然と見つめていた


「そんな……なんで……」

かつての村を思い出し涙が溢れてくるネギは、どうしていいかわからないまま立ち尽くしている

あまりにもあっさりと倒され自ら滅びを願うヘルマンに、ネギはやり場のない感情が溢れていた


「真実を知りたくば、君が自ら追求するしかない。 今も治療のあてもなく眠っている村人達も、治療が不可能な訳ではない。 全ては君次第だ」

痛みに耐えながらも語るヘルマンを、ネギはただ立ち尽くしたまま見つめるしか出来ない


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