その二

「なら魔法使いとは別に狙撃に回ってくれ。 第一目的が人質の救出で出来れば魔法使いに退治させるように頼むが、危険だと判断したら決めてくれ」

「わかった」

横島の言葉に真名は表情を変えずにその場を後にしていくが、刹那は少し不思議そうに横島を見つめていた


「よく龍宮が銃を使ってる事知ってましたね?」

「僅かに匂いがするんだ。 火薬や硝煙の独特の。 よほど銃を使わんとあそこまで体に匂いが染み付く事はないだろうに……」

横島が真名の戦い方を知る事が不思議な刹那だが、匂いと言われてなんとなく理解する

そんな刹那と対照的に横島は微妙な表情のままだった


「フォフォフォ…… 上手くいったようじゃのう」

「おじいちゃん……」

そんな中で緊張感のカケラもない学園長に、木乃香が微妙に困った表情なのは仕方ない事だろう


(このじいさんも困ったもんだな)

よく言えば何があっても動じないのだろうが、悪く言えば危機感が足りないだけである

修学旅行で見込みが甘かった事や今回の事で、学園長にはその辺りの物足りなさを感じて仕方なかった


「エヴァちゃんと茶々丸ちゃんと刹那ちゃんと楓ちゃんと古ちゃんで、人質を救出してくれ。 俺はおとりになるからさ」

とりあえず学園長の事は横島には関係がないので放置して、救出組の人選と作戦のツメを行う


「ウチとまきちゃんは留守番なん?」

救出組から漏れた木乃香とまき絵は若干不満そうだが、仕方ないといった感じでもある

救出組で一番弱いだろう古菲ですから木乃香達との実力は違い過ぎるのだから、木乃香とまき絵は実力不足を理解しているようだ


「そうだな。 今回は良く見てて欲しい。 特にまき絵ちゃんは実際の戦いがどれだけ危険か知らんしな」

友達が捕まってるのに何も出来ない事に木乃香は僅かに悔しそうな表情を浮かべるが、まき絵は戸惑っていた

彼女にとって誘拐などの危機は、現実味がないテレビの世界での事だったのだ

京都での戦いは聞いてはいたが、初めて体験する裏の世界の戦いと厳しさに戸惑っている



同じ頃、ヘルマンとネギはすでに戦いを初めていた

人質になっているのは、明日菜・夕映・のどか・千鶴・夏美・あやかである

あやかは気絶しているが後の5人は起きており、特に千鶴と夏美は目の前で始まったネギと小太郎対ヘルマンの戦いを信じられない様子で見ていた


「一体何が……」

震える夏美を千鶴は抱きしめて落ち着かせるが、当の千鶴もまた状況が把握できなくて戸惑っている


「大丈夫です。 すぐに助けが来るです」

戸惑う二人を励ますように言葉をかける夕映だが、彼女は明日菜の魔法無効化について考え込んでいた

あやかを含め5人は同じスライムの水牢に閉じ込められているが、明日菜だけは別に吊されて魔法無効化能力を利用されているのだ


(何故あの人が明日菜さんの能力を知ってるのでしょう?)

この時、夕映はふと修学旅行から帰った直後を思い出し始めた

それは修学旅行から帰った直後、横島は木乃香・刹那・明日菜・のどかの仮契約したメンバーのアーティファクトなどを把握するように調べていたのだ

その時に明日菜の魔法無効化能力も判明していたが、エヴァの忠告によりその事実は仲間内だけの絶対の秘密とされ学園長にも言わないように念を押されていたのである


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