その二

学園長が魔法使いを集めたのは、シスターシャクティ達が普段使っている教会だった

およそ50~60人の魔法関係者が集められた教会内部は異様な空気である

これだけの魔法使いが一度に緊急召集など近年は経験がない

事情も聞かされてないため、緊張感に包まれてる者や緊張感無く面倒そうにしてる者など様々である


そんな教会に横島達が入っていくと、魔法関係者がざわめく

横島本人は魔法関係者の警備員として知られているが魔法使いの集まりには顔を出さないし、一緒にエヴァと木乃香達が居る事で関係者は混乱している者もいる

とくに闇の福音として魔法使いが恐れて来たエヴァと、学園長の孫である木乃香が一緒に居る事が信じられないようだ


「揃ってるようじゃな。 後は任せて構わんか? 横島君」

横島達に続き教会に学園長が入ったところで、教会内部は静まりかえる


「ええ、ありがとうございます」

学園長とエヴァや木乃香達が最後尾で立ち止まる中、横島は一人前に歩いていく


(高畑先生は居ないか……)

魔法使いの中に高畑が居ない事に内心ため息をはく横島だが、表情には表さずに魔法関係者の前に出ていた


「麻帆良の結界内に魔族が侵入しました。 すでに魔族は人質を数人確保して世界樹前広場を占拠しており、これより人質の救出と魔族の撃退をします。 よろしいですか?」

何の説明もなく最低限の情報を伝えた横島に、魔法関係者には動揺が走る

今までは魔法先生などが少数精鋭で侵入者に対応していた為、突然の対応の変化に戸惑う者が多いようだ


「異論がないようなんで詳しい作戦を……」

ざわめくばかりで異論がないため横島はどんどん話を進めていくが、数名の魔法先生以外は戸惑いの方が多いようである

そんな中で横島が考えた作戦は数名の魔法先生で魔族撃退を行い、残りの魔法使い達は少し離れた場所からヘルマンを包囲する作戦であった


正直、包囲組は戦略上はあまり必要性はない

名目上は魔族が人質を連れて逃走するのを防止する為と、魔族の援軍が来たら援軍を防ぐ事を目的としているが、包囲組にそこまで出来るかといえば疑問が残る

逃走も転移術の類だと包囲も無意味になるなど一見穴の多い作戦だが、包囲組を用いた真意は別にあるのだ


「なお、人質の救出と先走りをした馬鹿の安全確保を最優先とします。 人質の救出はエヴァちゃんと刹那ちゃん達でするんで、人質を保護し次第魔法先生は魔族の撃退をしてください」

最後に一番の問題である人質を救出するメンバーに、横島はエヴァと刹那達を指名していた

この作戦は裏で土偶羅がサポートしてる為に失敗の可能性は低いのだが、敵が魔族である事を考慮して横島が慎重に考えた結果である

横島としては高畑が居れば高畑を救出組にしたかったのだが、居ない以上救出組を任せるほど信頼出来る魔法使いが居ないのが原因だった

これは魔法使い達の性格や戦い方を、横島が知らない事も影響している

おおよその強さは見ればわかるのだが、性格や戦い方を知らない人間を人質の救出に使うのはリスクが高すぎると判断したようだ


「ちょっと待ってくれ! まさか君は闇の福音を知らないのか!?」

ざわめきや動揺が広がる中で声を上げたのは、ガンドルフィーニであった


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