その二

『問題はそこじゃないんですよ。 とにかく見習いでもいいんで、裏の人間を全部集めて下さい。 すでに明日菜ちゃんを人質に捕られてます』

なかなかいい返事をしない学園長に、横島は少し苛立ち気味に言い放つ


『人質じゃと……』

明日菜を人質と言われた学園長は、珍しく言葉に緊張感が出ていた


(まさか……)

一瞬最悪のシナリオが浮かぶ学園長だが、それは有り得ないと思いすぐに心を落ち着ける


『わかった。 横島君に任せよう』

しばしの沈黙の後に学園長は横島の申し出を受け入れ、魔法関係者に緊急召集を初めていく



「どう言うつもりだ?」

電話を切った横島の背後に突然現れたのはエヴァと茶々丸だった

すでに侵入者を察知したらしく、その表情は真剣である


「学園長に言った通りだよ。 人質の奪還と侵入者を捕らえる必要があるだろ?」

「何故わざわざ未熟者を集める? 邪魔なだけだろう」

驚いた様子の無い横島は淡々と説明するが、エヴァは納得しない

横島の実力を知るがゆえに、何故未熟者を集めるのかわからないようだ

まあ単純に考えれば横島とエヴァが二人で救出するのが、一番確実で安全なのだから仕方ないが


「エヴァちゃんは手厳しいな~ まあ未熟だからこそ、この機会に経験させる必要はあるだろ?」

「それを何故お前が考えるのだ? 魔法使い共の事など、ジジイに任せておけばいい」

「まあそうなんだけどさ。 あのじいさんはツメが甘いからな。 今後の事も考えれば、少しテコ入れが必要かと思ってね」

魔法使いを集めた事に不満そうなエヴァだが、横島の考えを察すると渋々黙っていた

あまり好きな方法ではないのだろうが、仕方ないという感じである



その頃、ヘルマンは千鶴達の部屋に居た


「やあ、狼男の少年元気だったかね?」

部屋の入口であやかを眠らせたヘルマンは土足のまま上がり込み、小太郎に冷たい視線を送る

その異様な様子に部屋の中は静まり返り、夏美は千鶴の後ろで顔を真っ青にしていた

女子寮の部屋に土足で上がり込むヘルマンが、ただの客でないのはすぐにわかる


(狼男の少年……?)

そして千鶴だが、夏美を庇いながらもヘルマンの言葉と視線の意味を考えていた


狙いは小太郎と名乗った少年な事は理解した千鶴は、『狼男』と言う言葉が気になりながらもこの場をどう乗り切るか考えていく

しかし事態は千鶴がの考えが纏まる前に 進んでしまう


「さて、少年。 瓶を渡して貰おうか。 我々の仕事の目標はネギ少年だが、その瓶に再度封印されては元も子もないのでね」

軽い一撃で小太郎を吹き飛ばしたヘルマンは、冷たい表情のままで瓶を要求していた

そんなヘルマンの言葉に一時的に記憶を亡くしている小太郎は元より、千鶴や夏美は意味がわからぬまま立ち尽くしている


(ネギ少年? 瓶?)

目の前で見た人知を越えるヘルマンの攻撃に千鶴は驚きを感じながらも、必死にヘルマンの言葉から目の前の事態を解決する方法を考えていく


「あなたがどちら様か存じませんが……、少なくとも挨拶も名乗りもしないで他人の部屋に土足で上がり込むなど、マトモな紳士のする事とは思えませんが?」

それは無謀かもしれないと千鶴は理解していた

言葉で解決する次元の問題でない事を理解しつつ、彼女には言葉で語りかけるしか方法がない


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