その二

それからしばらくは平和な日々が続いていた

横島が心配したさよの事だが、予想以上に簡単にクラスに溶け込んでいる

幽霊特有の浮世離れした感じや天然な感じは相変わらずだが、いろいろと個性溢れるクラスなだけに意外と目立ってなかった



そしてこの日は、一同揃って霊動シュミレーション施設での実戦的修行が行われていた


「ネギは相変わらずだな……」

そんな中で現在シュミレーションで戦っているネギを見つめる横島の表情は、なんとも困った様子である

ネギが相手にしているのは、強さを半分に設定したネギ自身が10人だった

これはネギの最大の欠点である視野の狭さを鍛えるために行っているが、相変わらず基本に忠実な戦いしか出来ない

雷の暴風などの強力な魔法を使うタイミングがないために拳法を主体に戦うが、すぐに囲まれてやられてしまい戦い方以前の問題である


「なんと言うかさ~ 勝てないのわかってるんだから、もっと考えて欲しいんだが…… 一体逃げながら呪文を唱えるとかさ~ いろいろ方法があると思うんだよな」

毎回戦い方は微妙変えるが、相変わらずに真正面から向かって行く事を辞めないネギの頭の固さには横島も困っていた

シュミレーションと言う安心感がある事も原因だが、何故勝てる方法を考えないのか横島は不思議で仕方ない


「甘いんじゃないか? 一回死ぬ寸前まで痛め付けたらどうだ?」

霊動シュミレーションのコントロール室にまで酒を持ち込んで飲んでいたエヴァは、横島が甘いと考えていた

横島としては小竜姫の記憶や経験を元に修行の計画を立てているが、やはりエヴァから見れば甘いと感じるようだ


「ちょっと、エヴァちゃん! それはあんまりよ! ネギはまだ子供なの!!」

痛め付けると言う言葉に明日菜は少し怒りの表情で抗議するが、エヴァは表情を変える事なく聞き流している


「そろそろ根本的な教育に切り替える時期なのかもな」

ネギ本人の希望もあり魔法や戦闘の修行を進めていた横島だが、修行が進めば進むほど精神面の未熟さが目立ってしまう

最早魔法使い云々以前に、人としての教育が必要かと考えていた


(霊感がうずくな…… なにかが間違ってるのか?)

以前からたまに感じていたが、ネギの修行が進めば進むほど横島は言葉に出来ないほど些細な違和感を感じている

それが霊感なのは理解しているが、横島でさえもそれが何なのかわからない


「次は拙者でござるな」

ネギが気絶して終わった後、次にシュミレーションに入ったのは楓である

楓もネギと同じく力が半分の自分10人と戦うが、こちらは分身の術を使うため数十人の楓同士の乱戦になっていく


「圧倒的ですね……」

「まあな。 自分自身だからどんな戦いをするかわかるし、本来は戦いやすい相手なんだ。 それに君達の中で一番戦いが上手いのは楓ちゃんだな」

力が半分とはいえ10人を相手に圧倒して倒していく楓に刹那は少し驚きの声を上げるが、横島いわく本来はあれが普通らしい

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