その二

それから身体を得たさよのはアジトに居るメンバーと対面するのだが、見た目は人間と区別が出来ないため一同驚愕してしまう


「みなさん、くすぐったいです~」

物珍しさからみんなにあちこち体を触られていくが、さよはくすぐったいらしく体をクネクネとよじらせる


「本当にロボットなの?」

さよの初々しい反応に明日菜は半信半疑で横島に尋ねた

明日菜の頭には表面が固いイメージがあり、茶々丸に近い体を想像したようである


「ロボットって括りには入らないかな。 人造人間と呼んではいるが、技術的には兵鬼の部類に近いからな。 ハニワ兵の親戚みたいなもんだよ」

説明が難しい人造人間をどう明日菜に話せばいいか少し悩んだ横島は、かなりアバウトな説明をしていた

まあアシュタロスの事や人造人間の本来の目的など語れない事が多いし、魔法の理解度も低い明日菜に人造人間を理解させるのは簡単ではない


「私、ハニワさんの親戚になったんですか!?」

そんな横島のアバウトな言葉に明日菜が分かったようなわからないような顔をしている中で、驚き引っ掛かったのはさよである
 
別にさよが親戚になった訳ではないが、少し勘違いしてるらしい

この辺りはさよには以前に説明したのだが、オカルトや魔法を理解し始めたのが最近でありイマイチ理解度は中途半端のままだった


「いや、さよちゃんの体の事だよ。 基本が科学じゃないんだ」

少し困ったように説明する横島だが、さよはあまり気にしてないらしく軽く聞き流している


「じゃあ、今日はさよちゃんの新しい誕生パーティーだね!」

一方さよの体をあちこち触っていたまき絵は、体を得た=新しい誕生日と勝手に決めて、誕生パーティーをしようと言い出す


「それがええなー 誕生日ならケーキが必要やな」

まき絵の突然の思いつきに木乃香達も簡単に賛成して、さっそくみんながさよの誕生パーティーの準備を始めていく

この辺りのノリの良さは相変わらずで、何かしらの理由を付けてはパーティーやらご馳走を作るのが最近多くなっている


「本当に騒ぐのが好きな連中だな」

さよが人間と変わらぬ見た目の体を手に入れた事を簡単に受け入れてしまう木乃香達を、エヴァは少し呆れた様子で見つめていた
 
 
「俺はあれでいいと思うよ。 若いんだから、たっぷり今を楽しめばいい。 ネギも見習って欲しいくらいだ」

プラス思考と言うか楽天的な一同だが、横島はそれでいいと感じていた

何の蟠りも無く幽霊のさよがみんなに溶け込んでる姿は、見ていて嬉しくなるのだ

普通の幸せの価値を知るからこそ横島はそう感じていた


「つまらん人間になるだけじゃないか?」

一方横島の言葉を聞いていたエヴァは、横島の考えに少し否定的である

平凡な幸せに身を任せれば、つまらない人間になると思うようだ


「そうかな。 俺は 普通の楽しさや幸せが何より必要だと思う」

半信半疑のエヴァを見ていると、横島はふとエヴァにも普通の幸せが必要だと思う


(幸せを知らなきゃ幸せになれんだろ? ナギがお前を麻帆良に預けたのもその辺りが理由じゃないのか?)

前々から感じていたが、エヴァは幸せをほとんど知らないように横島には見える
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