その二
午前中の修行が終わった後、横島は研究室に居た
さよに与える人造人間の試験体2号の起動実験に取り掛かる為である
(カオスが居たらなんて言うんだろうな~)
ふと思い出したのは、共に量産型人造人間の開発を始めた頃のカオスだった
開発当初、中心だったのは横島では無くカオスだったのだ
当時はすでにルシオラの記憶や技術を受け継いでいた横島だが、それはアシュタロスがルシオラに与えた技術でありルシオラが経験して得た技術ではない
その結果横島は、知識や技術はあるのに経験不足と言う難しい状態だったのである
そんな横島に技術者の心構えなど基礎中の基礎から経験を教えてくれたのは、他ならぬカオスなのだ
宝の持ち腐れ状態だったアシュタロスの技術を実際に使えるように横島を教育したのが人間のカオスだとは、運命の皮肉と言うしかないかもしれないが
『横島よ、お前もいずれ創造する喜びがわかるじゃろう。 ワシはその時が楽しみじゃよ』
かつてカオスが言った言葉を思い出す横島は、今の自分でもまだ理解出来ない感覚が多い気がした
(所詮、俺の知識や力は借り物だしな…… カオスやアシュタロスのような本物とは違うか)
「横島さん、いかがされましたか?」
横島が昔を思い出していたのは僅か一瞬だったが、作業の手が止まった事で茶々丸は何かあったのかと横島を見つめている
「少し昔を思い出してただけだよ。 さて起動実験始めるか」
横島の表情が少し気になる茶々丸だが、あえて口にする事は無かった
「はい、こちらは準備完了です」
ここ数日、茶々丸は自発的に横島の作業を手伝っている
修行の合間や深夜に一人で作業する横島を見かねて、手伝いを申し出ていたのだ
技術的違いや茶々丸自身が技術を持っている訳ではないので専門的な事は出来なかったが、それでもかなり横島の手助けになっている
何より過去の思い出の詰まった研究室に一人で居るよりは、茶々丸が一緒の方が遥かに気持ちが楽になったのは明らかだった
「起動開始、出力10%」
人造人間の起動を開始すると、次々にモニターに数値やデータが表示されていく
「メインシステム異常ありません。 出力9.98%で安定しました」
茶々丸の声に横島は安堵の表情を見せた
まだ動かないがシステム自体が正常に動いてるならば、完成するのは時間の問題である
「無事に動いたな……」
「これだけ完成度が高くても不安だったのですか?」
ホッと一息つく横島に、茶々丸は不思議そうに首を傾げる
理論上は完璧ともいえる人造人間の起動は、ある意味当然だと茶々丸には思えた
「アハハッ。 実際に動かしてみなきゃわからん事も多いんだよ。 これを一緒に作ってた奴は、失敗こそ意味があるって言ってたしな」
不思議そうな茶々丸に横島は思わず笑ってしまう
知識や技術があっても経験が不足してる茶々丸の姿は、三姉妹やかつての横島を思い出させるのだ
「私、おかしな事を言いましたか?」
「ゴメン、ゴメン。 変な意味じゃないよ。 茶々丸ちゃんも大人になって来たな~と思ってさ」
何故笑うのかわからない茶々丸は真顔で笑う理由を聞くが、横島の答えは茶々丸には意味がわからない
「茶々丸ちゃんは生きてるって事だよ」
笑顔で生きてると言われた茶々丸は、不思議な気持ちに包まれていた
ボディ自体に変化は無いため茶々丸にはその意味がわからないが、心地良いその気持ちに自然と笑顔を浮かべている
さよに与える人造人間の試験体2号の起動実験に取り掛かる為である
(カオスが居たらなんて言うんだろうな~)
ふと思い出したのは、共に量産型人造人間の開発を始めた頃のカオスだった
開発当初、中心だったのは横島では無くカオスだったのだ
当時はすでにルシオラの記憶や技術を受け継いでいた横島だが、それはアシュタロスがルシオラに与えた技術でありルシオラが経験して得た技術ではない
その結果横島は、知識や技術はあるのに経験不足と言う難しい状態だったのである
そんな横島に技術者の心構えなど基礎中の基礎から経験を教えてくれたのは、他ならぬカオスなのだ
宝の持ち腐れ状態だったアシュタロスの技術を実際に使えるように横島を教育したのが人間のカオスだとは、運命の皮肉と言うしかないかもしれないが
『横島よ、お前もいずれ創造する喜びがわかるじゃろう。 ワシはその時が楽しみじゃよ』
かつてカオスが言った言葉を思い出す横島は、今の自分でもまだ理解出来ない感覚が多い気がした
(所詮、俺の知識や力は借り物だしな…… カオスやアシュタロスのような本物とは違うか)
「横島さん、いかがされましたか?」
横島が昔を思い出していたのは僅か一瞬だったが、作業の手が止まった事で茶々丸は何かあったのかと横島を見つめている
「少し昔を思い出してただけだよ。 さて起動実験始めるか」
横島の表情が少し気になる茶々丸だが、あえて口にする事は無かった
「はい、こちらは準備完了です」
ここ数日、茶々丸は自発的に横島の作業を手伝っている
修行の合間や深夜に一人で作業する横島を見かねて、手伝いを申し出ていたのだ
技術的違いや茶々丸自身が技術を持っている訳ではないので専門的な事は出来なかったが、それでもかなり横島の手助けになっている
何より過去の思い出の詰まった研究室に一人で居るよりは、茶々丸が一緒の方が遥かに気持ちが楽になったのは明らかだった
「起動開始、出力10%」
人造人間の起動を開始すると、次々にモニターに数値やデータが表示されていく
「メインシステム異常ありません。 出力9.98%で安定しました」
茶々丸の声に横島は安堵の表情を見せた
まだ動かないがシステム自体が正常に動いてるならば、完成するのは時間の問題である
「無事に動いたな……」
「これだけ完成度が高くても不安だったのですか?」
ホッと一息つく横島に、茶々丸は不思議そうに首を傾げる
理論上は完璧ともいえる人造人間の起動は、ある意味当然だと茶々丸には思えた
「アハハッ。 実際に動かしてみなきゃわからん事も多いんだよ。 これを一緒に作ってた奴は、失敗こそ意味があるって言ってたしな」
不思議そうな茶々丸に横島は思わず笑ってしまう
知識や技術があっても経験が不足してる茶々丸の姿は、三姉妹やかつての横島を思い出させるのだ
「私、おかしな事を言いましたか?」
「ゴメン、ゴメン。 変な意味じゃないよ。 茶々丸ちゃんも大人になって来たな~と思ってさ」
何故笑うのかわからない茶々丸は真顔で笑う理由を聞くが、横島の答えは茶々丸には意味がわからない
「茶々丸ちゃんは生きてるって事だよ」
笑顔で生きてると言われた茶々丸は、不思議な気持ちに包まれていた
ボディ自体に変化は無いため茶々丸にはその意味がわからないが、心地良いその気持ちに自然と笑顔を浮かべている