その二

次の朝、一同揃って朝食を食べているのだが木乃香は朝から上機嫌で、横島は妙に落ち着かない感じである

明日菜はニヤニヤして横島を見ているし、のどかや夕映達は顔を赤らめては横島や木乃香を見ていた


「貴様ら小学生か! 特に横島! お前も大人なんだからしっかりせんか!!」

辺りを包んでいた甘酸っぱいような雰囲気に我慢の限界だったのは、もちろんエヴァである

それもそのはずで、あの後横島と木乃香は何一つ進展しないままだったのだ

積極的な木乃香を拒否もしない横島だが、だからといって自分から一歩を踏み出す事も出来ずに終わっていた

木乃香としては横島が拒否しなかった事である程度満足しており、横島としては木乃香を少し意識し始めているのだ


「いや、俺は別に……」

口ごもり視線を逸らす横島に、周りは思わず笑ってしまう

普段とのギャップで、どうしても面白く感じてしまうようだった


そんな朝から賑やかな一同だったが、朝食後は妙神山に移動していつものように修行に入っていく

先程からの雰囲気で幾分緊張感に欠ける一同だが、一人空気が読めないネギはいつものように真剣に修行に打ち込んでいた


「こいつだけは変わらんな」

一人真面目なネギに少しホッとする横島だが、反面空気が読めないのはどうかとも思う

そんな横島とエヴァの修行を受ける一同だが、それぞれ成長度合いや伸びる分野に違いが現れ初めている


「意外だったのは木乃香ちゃんか…」

「なんだ? 女が積極的なのは意外なのか?」

独り言のように呟いた横島に、エヴァはからかうような意地悪な笑みを浮かべていた


「うっ……、その話じゃなくて修行の話だよ」

かつて散々覗きをした横島だが、今になって覗かれる恥ずかしさをようやく悟ったようである


「別におかしくは無い。 詠春の娘だからな」

恥ずかしそうな横島に満足したエヴァは話を戻していた

横島とエヴァが語っているのは、木乃香の魔法以外の才能の事である

体力の伸びなど身体能力はイマイチ普通な木乃香だが、剣や格闘などのセンスはかなりあったのだ

他の素人組で才能がある明日菜と負けてない剣才があるのを、横島とエヴァは見抜いていた


「なるほどね……」

「詠春は神鳴流宗家の血筋だ、剣才が無い方がおかしい」

詠春が神鳴流の宗家の関係者だと聞いて横島は少し驚く

木乃香は魔法使いと剣士のサラブレッドなのだ

その気になれば、魔法使いにも剣士にもなれるだろう


(明日菜ちゃんもなんか訳ありっぽいしな~ いろいろ秘密を持った奴が多いクラスだよ)

体力作りのために走っている明日菜や木乃香達を眺めている横島は、ふと考えこむ

明日菜や木乃香のクラスメートには、あまりに秘密持ちが多すぎるのだ

何かしらの意図があり集められた可能性も考えられる


(まあ、俺には関係無いか……)

深入りするつもりは無い横島としては、現時点では土偶羅が軽く警戒してる程度だ

そしてこれからも関わるつもりは無いようだった


74/100ページ
スキ