その二

明日菜達バカレンジャー組が物珍しそうに城内を見て回る中、残りの横島達はエヴァの書庫に来ていた


「これは凄いです」

見渡す限りの本棚に夕映は目を輝かせる

綺麗に並んだ本の数は圧倒的だった

さすがに図書館島とは比べるまでも無いが、並の図書館よりは遥かに本の数が多い


「とりあえず魔法関係の書物はここだが…、何に使うんだ?」

案内したエヴァは横島を見て訳を尋ねる


「この世界の魔法は精霊の力を借りた物だろ? 俺の使う術とは微妙に違うんだ。 だから魔法関係の資料が欲しくてな」

近くの本を手に取りパラパラと流し読みする横島は、ここに来た訳を語っていく


事の始まりはネギや木乃香達の修行であった

横島には小竜姫やルシオラの知識や技術があるので人に教えるのには困らなかったのだが、横島の世界の技術とこの世界の技術には微妙な違いがあるのが問題なのである

まだ基礎中の基礎なので影響は無いが、やがて修行の段階が上がると微妙な違いが問題になる可能性があった

横島は今の段階から、この世界の魔法関係の知識や技術を知ろうとしていたのだ
 
 
「なるほどな… それならば、ここの本は好きに使うがいい。 ただし、坊や達はダメだ」

説明に納得したエヴァは横島には魔法関係の書物を見る事を許可するが、ネギや夕映達には許可を与えなかった


「えっ!? 僕も見たいのに……」

軽く見ただけでもかなりの貴重な魔法書があり、ネギは興味津々な様子で魔法書を手に取っていたのだが、突然のエヴァの言葉に驚き残念そうに見つめる


「お前達にはまだ早い。 中途半端な実力でここの魔法を覚えようとすれば痛い目を見るぞ!」

ネギを睨み付けたエヴァは、本を取り上げてしまう


「読むだけでもダメなのですか…?」

「基本的に古代ラテン語で書かれてるからな。 お前達の場合読めんよ」

夕映とのどかは残念そうに読むだけでもいいからと頼むが、彼女達に読める文字では無い

いかに本が好きな二人でも、さすがに文字が読めなくては無理なため諦めるしかなかった


「これだけの魔法書を個人で所有するなんて… やっぱり闇の魔王ってのは伊達じゃねぇな」

「別に趣味で集めた訳じゃない。 生きる為には必要だったのだ」

ネギの肩で驚き呟くカモに、エヴァは不機嫌そうに答える

魔法が好きな訳でも本を集める趣味がある訳でも無く、ただ生きる為に必要だった

その言葉の意味を本当に理解していたのは、横島とタマモのみである

吸血鬼の真相として恐れられ、何もしなくても多く人々に敵視されて来た

まさに世界中が敵の中を生き抜いて来たのだろうと思う


(少し似てるな…)

横島とタマモは互いに同じ事を感じていた

平和と安らぎを求めて人の世界に溶け込もうとした金毛白面九尾の妖狐とエヴァは、どこか共通するものがあると思う


「エヴァちゃん?」

一方木乃香達は、エヴァの姿に横島に似た複雑な悲しみを感じていた

まるで取り残された子供のような表情をする時の横島に、何故かダブって見える


「今日はせっかくやから、エヴァちゃんの家の完成パーティーでもしよか?」

「それはいいですね。 私も手伝うです」

「私も手伝います」

僅かな沈黙を破ったのはやはり木乃香だった

木乃香は突然パーティーをすると言い出して、夕映やのどかや刹那と共に茶々丸に案内されて城の台所に向かって行く


「時代は変わったのかもな…」

エヴァは小さな声でポツリと呟いていた

吸血鬼の自分を恐れるどころか元気付けようとする木乃香達に、エヴァは新たな時代の始まりかもしれないと感じている


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