その二

「覗きをするんなら、もっと気配を消さないとバレるぞ?」

驚き目をパチクリさせる木乃香達に、横島は悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた


「いつから気付いてたんですか?」

「ネギに声をかけられた後かな。 特に警戒してた訳じゃないけど偶然な」

気付かれた気配が全く無かったので刹那は驚き理由を聞くが、横島は偶然だったと答える

しかし実は、横島はタマモの居場所がだいたいわかるのだ

同じ魂を持つ為、ごくごく僅かだが魂が共鳴しているのが理由である


「さあ、戻るか!」

夕日が沈んだ海を一瞬寂しそうに見た横島は、木乃香達を連れてホテルに帰って行く

そして残されたのはネギと静かな海だけだった



その頃、コテージ型のホテルでは明日菜とあやかが部屋割でもめていた


「なんで私と本屋ちゃんがネギと同じ部屋なのよ!」

意図的な部屋割に文句をつける明日菜だったが、あやかは意味深な笑みを浮かべたままである


「嫌なのですか? ならネギ先生は私と一緒の部屋で……」

満面の笑顔で喜びを表すあやかだが、その表情は見る者を不安にしてしまう


「ちょっと、いいんちょ! 何考えてるのよ!?」

「それはネギ先生との熱い夜のことですわ!!」

満面の笑みで顔を赤らめるあやかには、明日菜でなくとも不安になる


「あう……」

そして二人の会話を聞いていたのどかは、あやかの言葉に何かを想像したらしく顔を真っ赤にしていた


「わかったわよ! 私達の部屋でいいわよ! 全くもう~、子供相手に何考えてるんだか!!」

結局、あやかなら本当にやりかねないと思った明日菜が折れる形で話は纏まる


しかし周りで話を聞いていたクラスメートは、そんな二人の会話にクスクス笑っていた

端から見れば、明日菜が上手く乗せられたのは明らかである

なんだかんだ言ってもネギを心配して保護者らしい明日菜に、周りは笑わずには居られなかった


「あやかうまくやったわね」

「アスナさんは単純ですからね。 それに人一倍心配してるクセに意地っ張りなんだから…」

上手く明日菜を乗せたあやかに千鶴が声をかけるが、あやかもまた明日菜とネギの両方を心配している


(やっぱり損な性格よね)

ずっと見ていた夏美は、あやかも十分心配しすぎだと思っていた


その後部屋で夕食までくつろぐのだが、明日菜とのどかはネギとどう接していいのか悩んでいる


「ねえ、これって絶対私達を仲直りさせようとしてるわよね」

「そうだと思うよ…」

ネギが部屋に来ないので二人で話し込むのだが、明日菜ものどかも答えが見つからなかった

二人は元々ネギとケンカしたかった訳ではないのだ

他人と同じ扱いをされたのが許せなくて怒ったら、ネギが全く理解して無かったために問題が膠着状態になってしまっている

実際、明日菜ものどかも困っているのはネギと同じだった


「考えてみれば10才の子供相手に、私何してるんだろ」

何も知らない第三者から見れば、自分はひどく大人気なく見えてるだろうと思った明日菜は、何故か怒るのが馬鹿馬鹿しく思えて来る



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