その二

そんな会話をしながらも、さよの霊体や魂の調査は進んでゆく

時折モニターを見ながら考え込む横島だが、2時間ほど作業をして一つの結論をだしていた


「さよちゃん、君に体を与えよう。 ちょうど昔開発した試作品があるからな」

「へっ? 体ですかー!!」

横島の言葉に驚き絶叫するさよ

そして同じくずっと横島の作業を見ていた茶々丸と夕映も驚いていた


「着いて来てくれ」

横島がそう告げてさよやエヴァ達を別の部屋へ案内する

馬鹿でかい屋敷の普段は行かない奥の方は、様々な倉庫などになっていた

部屋の中がまた別の空間に繋がっていたりするので、建物の見た目より遥かに部屋の数は多いのだ

そんな中横島がさよやエヴァ達を連れて行った部屋は、様々な機械がたくさんある部屋であった


そして、部屋の中央には椅子に座るアンドロイドが数体ある

「これは…」

それに驚いたのは茶々丸である

顔や体の表面はまだ無いが、明らかに自分と同じような存在なのだから


「人造人間、M666の量産型試験体だよ」

そこにある3体の人造人間は、その昔ドクターカオスと横島が共同開発したものである

神魔戦争初期に、圧倒的な戦力不足に悩まされた横島達が、考えた末に開発に取り掛かった計画であった


『M計画』

カオスがそう名付けた計画は、横島の持つアシュタロスの技術とカオスの技術を用いて、マリアを発展強化した人造人間を量産する計画であったのだ

最終的にはマリアの人工魂をコピーして使用する計画であり、計画自体はかなり進んでいた


しかし、途中でカオスが亡くなってしまい、マリアもデータごと破壊されてしまう

当時神魔と戦っていたマリアの損傷が頻繁にあり、スペアボディや試験体が間に合わず修復不可能であった

結果的にマリアの魂をそのまま維持することが不可能になり、横島はマリアの人工魂を輪廻転生に送っていた

次は純粋な生命として転生出来るように術をかけて…



そして残されたのが開発中だった試験体であった

その後、試験体は完成させたものの横島はそれを起動させること無く計画を終了してしまう

カオスの残した資料やアシュタロスの知識により、魂の精製は技術的には可能だった横島だが、結果的には出来なかった

魂を物のように扱う神魔達と戦っている自分が、戦うことを目的とした魂を精製することが出来なかったのだ

そんな横島の様々な葛藤の末、試験体はテストされることも無く今も眠っている



横島が少し昔を思い出してる間に、さよやエヴァ達は試験体を興味深げに見ていた


「あの… この顔が無い人形が私の体ですか…?」

少し困った表情で、さよは恐る恐る横島に問い掛ける

みんなと友達になれる体をくれるのは嬉しいが、顔も無い人形では少々嫌だった


「顔…? 顔やボディはさよちゃんに合わせてこれから作るよ。 後はさよちゃんに合わせた調整やら起動テストやらいろいろあるけど、そんなに日にちはかからないよ。 基本的に完成してるし」

さよの心配を悟った横島は思わず吹き出している

さすがにこのまま街を歩く姿は無理があるのだから


「よかった… このままじゃお化けに間違われそうで…」

一安心して不安を口にしたさよ

どうやら自分が幽霊だと言う自覚はあまり無いようだ


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