その二

一方、夕映や賢い者達は別の疑問を持っていた

(幽霊は気付かれないのが普通なのでは…)

そもそも、幽霊に才能が必要などと聞いたことが無いのだ

そんな突っ込み所が満載の話だが、一同は静かに聞いていた


「さすがに何年も話し相手が居ないと寂しかったんです。 それに私、とっても怖がりで夜の学校も苦手なんです。 最近は朝まで近所のコンビニやファミレスで過ごしてました」

最早、どこからどこまで突っ込んでいいかわからない話は、まだまだ続いてゆく

やっと見つかった話相手に感動するさよは、寂しさや恐さをどんどん語っている


「話を止めて悪いが、さよちゃんは地縛霊じゃないぞ…」

さよの独演会を止めたのは横島であった

地縛霊だと信じるさよだが、そもそも幽霊の記憶は曖昧なのだ

長い孤独の中でさよが勝手に地縛霊だと思い込んでいただけである


「えっ!? でも、私は麻帆良から出れませんが… 学校近辺なら動けますが」

信じられないような驚きの表情でさよは横島を見つめた


「それは恐らく学園を守る結界に引っ掛かるからだ。 外敵を拒み、結界内の魔物などの力を抑える結界が麻帆良を包んでいる。 お前はその結界に引っ掛かって出れないんだろう」

驚くさよに麻帆良から出れない理由を説明したのはエヴァである

それはかつて登校地獄の呪いと共に、エヴァ自身が味わっていたから良くわかっていた


ちなみに学園の結界単独ではエヴァの力は抑えられない

あれは登校地獄の呪いの力を利用して、エヴァの力を封印して麻帆良に釘付けにしていたのだ

麻帆良の結界自体で抑えられる魔の力は、あまりたいしたことは無い


「えー!! そうなんですか!? 私は地縛霊じゃ無かったなんて… どうしましょう」

60年間知らなかった真実を知ったさよは、どうしていいかわからずオロオロしてしまう


(別にどうもしなくていいのではないでしょうか?)

数人がそんなことを思う中、さよの姿が薄くなっていく


「あれ? さよちゃん消えて行く…」

驚くまき絵はさよに近寄るが、その姿はどんどん薄くなり消えてしまう


「術が切れたんだよ。 思ったより短かったな…」

さよが見えていた時間は3時間くらいであった

横島としてはもう少し持つかと思ったが、さよの霊体が思った以上に弱いため文珠の効果が短かったようだ


「せっかくお友達になってくれそうだったのに…」

見えないさよを探すみんなを見て、さよは寂しそうにつぶやく


「横島さん、また見えるように出来へんの?」

「いや、さっきの術で見えるようにするのは簡単だけど、時間が短すぎるからな…」

寂しそうに消えて行ったさよと友達になりたいと、木乃香は思っていた

幼い頃の孤独な記憶がある木乃香は、一人の寂しさを良く理解している


「なんか常時見える方法を考えるから待っててくれ。 さよちゃんもそれでいいか?」

「はい! お願いします」


少し考え込んでいた横島は、落ち込むさよと心配そうな一同にそう告げて、さよを連れて研究室の方に移動していく


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