その二

そして夕食時…

いつものように大人数が集まった頃、横島はさよの事をみんなに話そうとしていた


「えーっと、今から紹介する人が居るから落ち着いてな。 危険とかは無いからさ」

少し言いにくそうに言い出した横島をみんな不思議そうに見つめる


唯一何を話すのか理解しているのはエヴァだけだ

吸血鬼の彼女は人間と違い霊感なども神魔族に近いようである


そしてみんなが注目する中、横島は文珠の【現】を使ってさよの姿を見えるようにした

キィィーン!


文珠が発動すると何も無い横島の隣にさよの姿が現れる

「どうやって紹介するんですか?」

一方意味のわからないさよは、不思議そうな表情で横島を見ていた


「えっ…!?」

木乃香達は突然現れたさよに驚き視線が集まる


「へっ? まさか… 私が見えてますか?」

自分に集まる視線にさよは再び周囲を見渡すが、自分以外には特に何も無い

まさか横島の時のように見えてるのではと思ったさよは、恐る恐る声をかけていた


「……」

みんな無言のままコックリと頷き、さよはまさかと思い場所を移動してみるが、視線もさよを追いかけて動いた


「あっ… あの… とっ友達になって下さい!」

みんなが見えてると知ったさよは、このチャンスは逃がさないようにと気合いを入れて頭を下げた


「アハハッ…」

「クスクス…」


突然現れた幽霊に驚いていた一同は、思わず笑ってしまう

まさか幽霊に友達になってと言われるとは思わなかったようだ


「あの… あなたは相坂さよさんでは…? 確かクラスの名簿に名前のあった」

一生懸命頭を下げるさよを見て、ネギはクラス名簿にあったさよを思い出す


「あっ! 知ってる! 座らずの席の噂の人だよね!」

まき絵が真っ先に声を上げると、みんな知っているようでさよの噂でガヤガヤと話し出した


「あの噂本当だったんですね。 私でも全く感じなかったのでデマだと思ってました」

「刹那さんでも見えない幽霊なのね」

刹那と明日菜が信じられない様子で見ると、さよはすでに木乃香や夕映やまき絵や古菲達に囲まれて質問責めにあっている


「ねえ? なんで友達欲しいん?」
 
「本物の幽霊を見れるとは…」

「幽霊って楽しいの?」

「わたしも幽霊は初めてアル」


木乃香、夕映、まき絵、古菲の順に次々にさよに話しかけるが、さよは一度には答えられず慌ててしまう


「みんなちょっと落ちついて、さよちゃんの話を聞こうな」

慌てた様子のさよに横島は苦笑いを浮かべて、みんなを落ち着かせる


「あの… 私、地縛霊を60年以上やってるんですが… 私は幽霊の才能が無いらしくて誰にも気付かれないんです」

みんなの注目を集めて嬉しいような恥ずかしいような気持ちのさよは、ゆっくり自己紹介を始めた


「地縛霊…」

さよの言葉に驚いたのは横島であった

地縛霊には見えないほど邪気が無く純粋である

それに地縛霊が自分と関係無い場所に行けるなど聞いたことも無い

このアジトに入れた時点で彼女は地縛霊では無いのだ
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