その二

「そんな… 今までどんな霊能者にも見つからなかったのに… 」

さよの震えるような呟きに横島は苦笑いする


この世界の霊能の技術は横島の世界より遥かに低いのだ

従って霊視などの技術はあまり発展も普及もしてない

その分、古より伝わる魔法が発展してきたのだから…


この世界の神魔の関係からか、異なる歴史を辿った結果からかわからないが、この世界は悪霊などの発生率が極めて少ない

そんな世界では、さよのような一般的幽霊は誰にも見つからないのだろう


「俺はちょっと特別でな… 迷子なら学校へ送って行くよ?」

優しく語りかける横島にさよは嬉しそうに近寄って来る

死んで以来初めて人と会話出来るのだから相当嬉しいようだ


「あの… とっ友達になって下さい!!」

突然目の前で真剣な表情で深く頭を下げるさよに、横島とタマモは呆然としてしまう


そんな様子を伺うようにチラリと視線を向けるさよを、横島は少し懐かしそうに見つめていた


「ああ、構わないよ。 俺は知ってるよな? こっちはタマモ。 まだ子供だけど妖狐だよ」
 
「コン!」


横島とタマモが笑顔で返事をするとさよは嬉しそうに喜び出す


(よほど寂しかったんだろうな… もっと速く声をかければ良かった)

横島に同化したおキヌが騒ぐように、昔の記憶が鮮明に蘇ってくる

一人ぼっちで300年幽霊をしていたおキヌとさよは、何故か似ている気がした


「よろしくお願いします!」

さよが嬉しそうに何度も頭を下げる頃、コンビニから木乃香が現れる


「おまたせ~ 横島さん… どうしたん?」

木乃香には横島がコンビニの店の前で、一人事を言ってるようにしか見えなかった

タマモと話してるのかとも思ったが、二人の視線が何も無い場所に集まっている


「とりあえず、家に帰ろう。 後で説明するよ。 君も着いておいで」

さすがにこの場所で幽霊を説明する訳にもいかず、横島はさよを連れて家に帰ることにした


「やっぱり私は見えてないんですね…」

さよは木乃香に全く気付かれない為、落ち込んでしまう


「幽霊ってのはみんなそんなもんだよ」

横島がさよを励ますように語ると、さよは少し笑顔を見せるが、今度は木乃香が不思議そうに首を傾げる

両者の間に入って説明に困る横島は、詳しくは家に帰ってから話そうと言って帰ってゆく



そして家に帰った横島は、さよを連れてアジトに行くことにした

「家の中なのにまた外になりましたよ!?」

キャーキャーと騒ぐさよを連れて、横島はそのまま刹那達が居る妙神山に移動する


「横島さんお帰りなさいです。 タマモちゃんの件は大丈夫でしたか?」

妙神山の母屋では夕映が霊能関係の本を読んでいた


「大丈夫だったよ。 みんなは道場か異空間か?」

「刹那さんと長瀬さんと古菲さんは霊動シュミレーションに行ってます。 エヴァさん達は城を建てる場所を見に行きましたし、後の人はまだ来てません」

夕映の説明を聞き横島は、みんなが集まってから紹介しようと考える


一方さよは不思議な妙神山を興味深げにキョロキョロしており、木乃香はハニワ兵に夕食の材料を注文していた

51/100ページ
スキ