その二

「やっぱり過去に訳ありですか…」

横島と木乃香は学園長のつぶやきを聞き複雑そうな表情をした


先日の弟子入り試験の時の幻術に現れた謎の魔族達

あれがネギの過去と心に巣くう闇に関係あるのは明白だった

横島はネギが自分から言わないことは聞くつもりもないし、心を覗くつもりもないから黙って見守っていたのだ


「ネギ君が麻帆良に来た理由はそれも関係あるのじゃ… まあ、他にもいろいろ理由はあるがの」

学園長は言葉を濁して詳しく話さない

ネギの過去やその立場など、いろいろ複雑であり微妙なのだ

さすがに横島であれ詳しくは言えないことだった


「まあ、当面は様子を見ますよ。 まだ子供ですし、時間と共に成長してくれれば問題は減るでしょう」

横島は学園長にそう話して、木乃香とタマモを連れて学園長の部屋を後にする


しかし横島は、言葉とは裏腹に不安が拭えない

(何か… 嫌な予感がするな。 静かに大人になる時間が無いのかもしれない)

横島の霊感が一種の予知めいた警告を発していたのだ


「横島さん?」

「コン?」

難しい顔をして黙っている横島を見て、木乃香とタマモが不思議そうに見上げている


「何でもないよ。 ちょっと考えごとしてただけだよ」

2人に笑顔を見せて、横島達は自宅への帰り道を歩いていく



その頃、彼女はコンビニの前で道ゆく人を寂しそうに見つめていた


「みんな友達が居ていいですね… 私も友達が欲しいです」

寂しそうにつぶやく彼女の名は相坂さよ

誰にも気付かれないことを悲しむ幽霊であり、木乃香達のクラスメートでもある

しかし彼女は知らない

横島やエヴァなど、数は少ないがさよが見えてる人物が居ることを…


クラスメートではあるが、積極的に人には関わらないエヴァは自分からは話しかけないし

横島も能力を人に隠してる為、教室では見えないふりをしていることを知らないのだ



「横島さん、ちょっと本を買ってくるから待っててや」

その時、落ち込むさよが見たのはコンビニに入っていく木乃香と、店の前で待つ横島とタマモであった


「よう! 迷子にでもなったか?」

さよは突然目の前で話し出した横島を無言で見ていた

そして自分をジッと見つめる横島とタマモを見て、後ろを向く

誰か自分の後ろに人が居ると思ったらしい

今までどんな霊能者にも見つからなかったさよは、まさか自分が話しかけられてるとは思いもしないようだ


「君だよ。 相坂さよちゃんだろ? 俺のこと覚えてないか?」

横島の言葉にさよは驚きで目を丸くしてしまう


「あっ… あの… まさか私が見えてるんですか!?」

あまりの事態に驚きが止まらないさよは、恐る恐る横島に話しかけた


「うん、見えてるよ。 幽霊のさよちゃんだろ?」

横島とタマモはこっくりと頷く


「えーーー!!!」

さよの驚きの声が辺りに響くが、もちろん横島とタマモにしか聞こえない


「俺なんか悪いこと言ったか?」

あまりのさよの驚き方に、横島は何かしたかと不安になり腕の中のタマモに聞くが、タマモも不思議らしく首を傾げている

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