その二

それから現実世界で数日後…


あれからネギや木乃香達の修行は、毎日横島のアジトを使って1日増やして行われていた

修行方針は横島とエヴァの話し合いの元、基礎が2に対して実戦が1の割合で進められている

エヴァとしては、横島のやり方は少し甘いと考えていたようだが、人数の多さからして面倒観きれない為それで進められた


なお横島のアジトには、初日の夜にエヴァの魔法により転移魔法陣が作られた

これはあまりに広い、一つの世界と言っていい横島のアジト内部の移動が大変な為である


アジトの入り口がある建物の空き部屋を中継地点にして、妙神山、霊動シュミレーション、酒蔵

それに加えエヴァのリクエストにより、雪山、密林、砂漠、海などの各地と繋ぐ魔法陣も作られた


エヴァは近いうちに、アジト内部に自分の城を移すと言っており、土偶羅に相談して場所を探しているようだ


魔法陣と同時に、アジトの入り口の登録も全員済ませており、これからは時間の開いた者が好きな時間に利用出来るようにしていた

これは当初から横島が考えていた事であり、人数の多さからどうしても同じ時間に集まるのが大変な為である



そしてこの日、横島と木乃香はタマモを連れて学園長室に居た


理由は先日問題になったタマモの保護の件である

木乃香がこの場に居るのは、変な条件などを付けられないようにする為に横島がわざと同席させていた


「うむ… その子が金毛白面九尾か…」

学園長は木乃香の膝の上で丸まっているタマモを興味深げに覗き込む

金毛白面九尾の名前に一瞬耳をピクリと動かしたタマモだが、後は学園長を見ようともしない


「随分木乃香に懐いておるの」

微笑ましいその姿に学園長は笑みを浮かべる


「仲良しやもんね~」

木乃香が嬉しそうにそう話すと、タマモは返事変わりに尻尾を揺らす


「温泉まんじゅう食べるかの?」

出張先から買って来たと思われる温泉まんじゅうを木乃香に渡す学園長

あまりタマモの件は気にしてないようだ

「ありがとう、おじいちゃん。 後でみんなで頂くわ」


そんなほのぼのとした会話の中、横島は学園長がタマモの件をどうするか見守っていた

(うーん、こっちの世界でも金毛白面九尾は表向きは評判は悪いからな…)

事実では無い伝説が根付いているのは、この世界も同じであった

元々妖怪と言うだけで差別されるのに加えて、様々な争いに巻き込まれた金毛白面九尾

まさに人間に都合がいいように伝説は伝わっている


「さて、そのタマモちゃんと言ったの。 九尾の生まれ変わりじゃが、これまで同様に正体を隠して貰えばいいじゃろ。 元々、人間に害を与えようとする妖怪では無いしの…」

学園長は少し真面目な顔になり横島を見ていた


「知ってたんですね…」

「うむ、退治したと言われる京都の連中は認めておらんがの。 九尾が国家転覆に関係無いのは常識じゃよ」

驚く横島に学園長はこの世界の裏事情を説明する


九尾を悪役に祭り上げる陰謀に荷担した関西呪術協会の一部は、今だに九尾は危険だったと言い張っているが

魔法界などの一般的には九尾が関係無いのは割りと知られているらしい


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