その二

「私達は朝ご飯にしましょうか。 木乃香達ほど上手じゃないですが、今日は私が作るです」

時間も学校までは余裕がある為、夕映は朝食を作ろうと家に入る


「おう、ありがとうな…」

眠そうなタマモを連れた横島も家に入っていく


「ク~」

タマモは横島の膝に乗り、丸まって眠る体制に入った


「お疲れさま。」

横島がタマモを優しく撫でると、タマモは嬉しそうに目を瞑る


それから20分ほどで夕映は朝食を持って来た


「お待たせしました。」

夕映は、横島と自分には和風の朝食を用意して、タマモには和風のまぜご飯であった

焼き鮭や油揚げなどの横島と夕映の朝食と同じおかずを、食べやすいようにまぜご飯にしたのである


「ありがとう。 じゃあいただきます」

横島と夕映は向かい合い、朝食を食べ始める


タマモも美味しそうな匂いに、耳をピクピクさせて目を覚ます


「キュ~ン」

タマモは目を輝かせて、まぜご飯をパクパクと食べていく


「味は大丈夫ですか? あまり料理は自信が無いのですが」

夕映は横島とタマモに伺うように聞く


「美味しいよ。 夕映ちゃんも腕を上げたな~」

「コン!」


横島が笑顔で誉めると、タマモも同様に頷く


「それは良かったです…」

夕映は言葉少なくご飯を食べるが、その顔はほんのり赤く恥ずかしそうだ

(良く考えたら、私だけで料理を作るのは初めてです。 しかも、この状況は同棲や新婚みたいです)

夕映は得意の高速思考が暴走気味に進んでいた


「夕映ちゃん?」

顔がどんどん赤くなる夕映に、横島は不思議そうに問いかける


「はい…!?」

夕映はどんどん進んでいた思考から現実に戻ったようだ


「顔が赤いけど、疲れたか?」

横島は心配そうに夕映を見つめた


「いえ! 全然大丈夫です!」

夕映は慌てて平常心を心がける


「そうか? 無理するなよ」

横島は顔色が落ち着いていく夕映を見てホッとするが…


(危なかったです。 心配されただけで、顔がニヤケそうになりました)


夕映は自分の心の中で、落ち着けと必死に呟く


「クーン」

タマモは横島の鈍感さに、呆れ気味に首を横に振る



そんな朝食が終わると、横島はスーツに着替えて学校に行く支度をする


目の前ではタマモがちょこんと座り、見慣れぬ服に着替える横島を不思議そうに見ている


「俺はこれから学校なんだ。 一応仕事かな? タマモはどうする?」

横島は着替えながらタマモに説明する


「コン?」

学校を知らないタマモは、不思議そうに横島に聞く


「学校ってのはさ、子供達が勉強する場所だよ。 木乃香ちゃん達のような年の子供に勉強を教えてるんだよ」

横島の説明にタマモは、着いきたいと尻尾を振る


「いいけど、俺から離れるなよ? 魔法使いの多い学校だからな… お前の正体に気付かれてるしな」

横島がそう話すと、タマモは少し不安そうな表情をする


「まあ、心配するな。 お前には手出しはさせないよ。 それに木乃香ちゃん達も居るから大丈夫だよ」

横島は楽観的に笑っている

タマモが横島から離れなければ問題は無いのだ


「コン!」

タマモはしっかり頷き、横島の肩に乗る
38/100ページ
スキ