その一

「学園長もロクなこと考えないな~ 10才の子供に先生をさせるし、木乃香ちゃんに見合いかよ…」

横島は顔を引きつらせながら話した

「まだウチ子供やのに… 将来のパートナーは自分で選びたいんよ…」
「ウチはお見合いより横島さんの方がええな…」


木乃香は少し顔を赤らめ、横島の顔をじーっと見ながら話した

「俺の顔になんかついてるか?」

横島の答えに木乃香は苦笑いする

「横島さんって鈍感って言われたことあるやろ?」

「うーん、昔あるような気もするな~」

横島は首を傾げながら話した

「横島さんらしいな~ そうや、今度ウチが占ってあげようか? 横島さんのパートナー」

木乃香は横島を見て感じた
彼は他人の痛みや気持ちには敏感なのに、自分に対する好意には鈍感…
いや、彼はそうして自分に対して人を寄せ付けないようにしてるのだろうか…?
わからないが…
気になる…
もっと彼を知りたい…
木乃香はそう思った


「パートナーか~ 俺には縁がないな。 自慢じゃないが俺は全然モテないからな!」

横島は笑顔で元気一杯に話した

しかし
木乃香にはそれが笑顔には見えなかった
「大丈夫や、横島さんならウチがパートナーになったげるよ」

木乃香は笑顔で横島に話した

「うう… 木乃香ちゃんは優しいな~ 嘘でも嬉しいよー!」

横島は泣きまねをして喜んだ



そんな話をしているうちに…
ネギとそれを追いかけていたクラスメート達に見つかった

「あー 木乃香がデートしてる!」

横島と木乃香はクラスメートに囲まれてしまった

「木乃香ったら着物着て、横島さんとデートしてるなんてすごい!」

アスナが話して

「相手の人は誰なの?」

朝倉が興味津々で木乃香と横島に聞いてきた


木乃香は困ったような照れたような顔で微笑んでいた

「木乃香ちゃん… 逃げようか?」

横島はいきなり木乃香を、お姫様抱っこで抱きかかえて走って逃げ出した

「アハハッ 横島さん足も早いな~ みんなまたねー」

木乃香はネギ達に笑顔で手を振っていた

「木乃香ちゃんごめんね。 俺なんかと誤解されて… 後で誤解を解いておいてな」
横島は苦笑いしながら木乃香に謝った

「ウチはかまわないよ。 全然大丈夫や」

木乃香は笑顔で答えた

今日の事で後日、横島が大変になるのだが……
今の横島は知らなかった


「木乃香ちゃん、ちょっと寄り道しようか?」

横島は木乃香を抱えたまま文殊を出した。
文字は【隠】

そのまま横島は木乃香を抱えて飛んだ

「横島さんは飛べるんやね~ 何でも出来るんやな~」

木乃香は恐がりもせず関心していた
それは横島に抱きかかえられているからなのだが、横島は気がつかない

横島はそのまま世界樹の上の方に降りた。

木乃香を隣に座らせて街を眺めていた…

時間はちょうど夕方になってきて、西の空には夕焼けが見えていた


「予想した通りここからの夕日は綺麗だな~ 東京タワーもいいけど、ここもいいな~」

横島は夕日を見ながら木乃香に話した

「東京タワーの夕日ってそんなに綺麗なん?」

木乃香は横島を見て聞いた

「すごい綺麗だよ。 それに… 俺にとっては大切な思い出の場所なんだ…」

横島は懐かしそうに愛おしそうに話した


「昼と夜の一瞬の隙間… 短い時間しか見れないから… よけいに美しい…」


横島はふと口に出していた
最愛の人の一番好きな言葉を…

木乃香は夕日を見る横島の姿と、その言葉に胸が苦しくなった…

まるで恋人と語り合うような表情と言葉に…


「その言葉は誰が言った言葉なん?」

木乃香は気になってしかたなかった

横島は木乃香を見て微笑んで話した

「あの言葉は俺の死んだ恋人の言葉なんだ… 夕日が好きな人でな…」

横島は愛おしくせつない表情だった

木乃香はそんな横島を見て、思わず手を握った

彼の心の傷を少しでも癒せるように…

横島も木乃香の手は暖かかった…

そのまま二人は静かに夕日が見えなくなるまで見ていた


横島は日が暮れると木乃香を寮まで送った

「今日はありがとうな。 楽しかったよ」

「ウチも楽しかったええ。 また連れて行ってな」

横島も木乃香も笑顔で別れた
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