その二

みんな、沈んだような表情でその場の空気は重い

先ほどの出来事が予定外なのはみんな理解していた


「さっきの魔族が言った言葉は俺が幻に言わせたことだ。 俺はネギにある選択を迫る試験をした」

横島は真剣な表情でゆっくり語っていく


「ある選択?」

夕映は不思議そうに聞く


「ああ、ネギは自分が正義だと思ってる。 だが、世界に絶対の正義など無い。 俺はそんなネギにイジワルな選択を迫ることにした… 大切な人の命と世界の平和。 そのどちらが大切か試す為のな…」

横島は悲しそうな表情で語っている


横島はかつて選択した経験があるからだ


そう…

横島は、世界と最愛の人のどちらかを選ばなければならない時

世界を選んだのだから…


その痛いほど悲しそうな表情に、木乃香達は心配して明日菜達も何も言えなくなる


辺りの空気が更に重くなる時エヴァが話し出した


「この試験に答えなど無い。 現実に、大切な人と世界を天秤にかけるなど有り得ないのだ。 だがな…、世界の為に死ねと世の中から言われたらどうする? 自分や大切な人は悪いことなどしてないのに… 存在そのものが悪だと決めつけられたらどうする? そんな勝手な奴らの正義の為に死んでやるか? それとも悪と言われても自分や大切な人を守るか?」

エヴァは複雑な眼差しで、その場の者達に問いかける


そして、横島とエヴァの試験の意味はそこにある

何を信じるか、守るかは人それぞれである


中途半端な正義感など、暴力でしかない


横島とエヴァはお互いに違うがそんな経験をしている

エヴァは吸血鬼と言うだけで、人々に襲われてきた

自ら望んでなった訳でもないのに

悪いことはしてないのに

悪と決めつけられてきた


一方横島も正義にあまりいい印象は無い

正義の名の下に、人間の犠牲など気にもしない過激派神族

世界の支配と維持が目的であり、人間などまたいくらでも増えると

家畜や虫以外の扱いをする神族と戦ってきたのだ


「中途半端な正義感で、自分は正しいことをしているとネギは思ってる。 だがな…、相手にも戦う理由はあるし、相手にも相手の考える正義がある。 ネギは自分が正義だと思い込み、敵対する相手を悪と決めつけたがる。 俺達はその価値観を試して、壊したかったんだ」

横島とエヴァの話は難しく深い

その場の者の中には理解出来ない者もいる

だが、重い空気に何も聞けない



「ク~ン…」

最初に動いたのはタマモである

横島に歩み寄り、心配するように見つめている


「大丈夫だよ。 ありがとうな」

横島が抱き上げるとタマモは嬉しそうにしている


「話が重かったな… 力を求めるのは悪いことじゃない。 ただ、ネギは子供なのに強すぎるんだ。 周りの大人が甘やかしてるんでな… みんなの周りのネギと同じような子供に銃を持たせると考えてみてくれ。 どれだけ危険かわかるだろ?」

横島は優しい表情に戻りわかりやすく例え話を言う

その表情は優しいが言葉は軽くは無い

わずか10才の子供に銃を持たせる

それは想像も出来ないほど危なっかしい

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