その二

「吸血鬼もいるし、妖弧もやっぱり実在するのね~」

明日菜、のどか、夕映は小狐を珍しそうに見ている


小狐はキョロキョロと明日菜達を警戒するように見つめて、横島を見上げる


「ここにいるのはみんな大丈夫だよ」

横島が小狐を撫でて話すと安心したのか警戒をやめる


「金毛白面九尾ですか… まさか実在するとは…」

「可愛いですね~」

夕映とのどかは九尾の伝説を知るらしく、感動や驚きでいっぱいだった


「名前はなんと言うんですか? やはり玉藻前ですか?」

夕映は小狐を触りたそうにしている


「そう言えば名前聞いてなかったな…」

横島は小狐を見ると…

『タマモよ』

念話で小狐は言ってきた


「タマモでいいってさ」

横島がまだ話せないタマモに変わりみんなに教える


「私は夕映よろしくです」

「私はのどかです。 よろしくお願いします」

夕映とのどかは自己紹介をして小狐を見る


小狐は横島の腕から降りて、トコトコと夕映とのどかの元に歩いて行く

「コン!」

小狐は二人に返事をして、見上げる

夕映とのどかが恐る恐る撫でると、嬉しいのかタマモは尻尾を振っていた


「妖弧は人間に化けれるって聞きましたがタマモちゃんも出来るのですか?」

夕映はタマモを撫でながら聞く


「キュ~ン…」

タマモは悲しそうに鳴く


「タマモはまだ無理だよ。 生まれたばかりだからな~ 数ヶ月もすれば変化も出来るようになるし、言葉を話せるよ」

横島がタマモに変わって説明する


そんな感じで横島が通訳をしながら、タマモと他のメンバーが話をしてく


この場に居ないのは調べ物があると出掛けた、ネギとまき絵だけである


ネギは京都で渡された麻帆良の地図を調べる為に出掛けている



そして夕方にはまき絵がやって来る


「ただいま~」

まき絵は横島の家をすでに自分の家のように帰って来た


「お帰りなさい」

茶々丸がまき絵に冷たい麦茶を持ってくる


誰もまき絵を突っ込まないし、茶々丸でさえ、当たり前のように出迎えている


(日に日に人が増えてくな…)

横島は心の中で苦笑いして呟いた

別に嫌ではない


ただ、自分がこの娘達の中にいるのに少し違和感があるだけだ

50年以上一人で戦争をしていた横島は未だに平和に慣れてなかった


「あれっ!? 可愛い~!!」

そんな時、まき絵は横島の膝の上で丸まっているタマモに気が付き、目を輝かせて近寄る


「ああ、こいつはタマモ。 妖弧だ。 人間の話も理解するんだよ」

目を輝かせてタマモを見つめるまき絵に横島は苦笑いしながら説明する

まき絵は横島の話に真剣な表情になりタマモを見つめる

タマモもまき絵を探るように見ている


「……妖弧……って何?」

まき絵が珍しく真面目に話した内容はそれだった


ズルッ!

横島達とタマモは力が抜けてしまう


「妖弧とは、狐の妖怪です」

真剣に考えるまき絵に夕映が簡単に説明する


「ふ~ん。 賢いのね~ いい子いい子~」

まき絵はなんとなく理解してタマモを撫でる

対してタマモは少し不思議そうにまき絵を見ている


「コ…ン?」

タマモは首を傾げて不思議そうに横島を見る


「ここにはお前を恐れたり、いじめるやつはいないよ」

横島は優しくタマモを抱き上げて話してやる


「ク~ン…」

タマモは一人一人顔を見ていく


確かにこの家にいる人間はみんな、タマモを見る目が優しい

一番冷静なエヴァでさえ、優しい目でタマモを見ている


「この家に住めばいい。 ここにいる限り、誰もお前を傷つけさせはしないよ」
横島はタマモを見つめて静かに優しく話す


タマモはその瞳を見て驚いていた…

とても複雑な瞳をしている

寂しさ、優しさ、つらさ、温かさ…

本当にいろいろな感情が混じり合う瞳だ

そして夢に見た時と随分感じが違っている…


横島から感じる自分と同じ妖力、しかし妖弧では無いようだ

17/100ページ
スキ