その二

「エヴァンジェリンさんでもですか!?」

刹那はエヴァが戦う前に負けを認めたのに驚いている


「私は魔法使いだ。 接近戦も出来るが、本来は距離を開けた戦いが主体だ。 その為、接近戦に限定すれば間違いなく勝てない。 横島のスピードが相手では、呪文の詠唱も無理だ。 体術や剣術では勝てん」

エヴァは的確に戦力分析をしながら説明する

「それより、お前が見るのは葛葉刀子の戦い方だ。 お前と似て、馬鹿正直に戦っている。 あれではダメなのだ。 より強さを求めるなら常に考えろ! 相手の裏をかき、相手に読まれない攻撃をしろ!」

エヴァは刹那の目が純粋な強さに向いているのを感じて、強い口調で言い放った


エヴァの言葉は当たっている

それが横島が刹那に見せたかったモノだったのだ

神鳴流の弱点と、刹那に戦い方を見せたかったのである


「はい!」

刹那は気合いを入れて、横島と刀子を見つめる



一方、距離を開けた刀子は、避けるばかりの横島に少しイラついていた

(何故攻撃をして来ないの? 私を馬鹿にしてるの?)
横島が動かない理解がわからない刀子は次の攻撃を迷っている


「さて… そろそろ俺から攻めるかな」

横島は少し微笑んで…

突然消えた!


刀子は驚いて、とっさに横にジャンプして逃げる

このような場合、相手は自分の見えない位置に来る可能性が高い

従って、相手が予想しない場所に逃げるのが一番なのだ


「よくよけたな~」

横島が現れたのは、刀子が先ほどいた背後だった

横島は呟き、すぐに刀子に斬りかかる


キィーン!!

キン!キン!キン!


横島は刀子に合わせて斬撃を繰り出す


刀子にとっては、とくに早いスピードではないが、変幻自在な斬撃で刀子の隙をついていく

刀子は自分の剣術の隙をつかれる上、読めない攻撃に苦戦している


横島に押され気味の刀子は、自分のペースを取り戻すべく、後ろにジャンプして距離を開ける


しかし刀子がジャンプした瞬間…

横島がまた消えた


「また消えた! 空間転移か!?」

刀子がイラつき、着地した瞬間…


勝負は決まっていた

横島は無言で刀子の背後に立っているのだ

さすがの刀子も、距離を開ける為にジャンプした着地点を狙われては、かわしようが無かった


「俺の勝ちでいいか?」

横島は剣を突きつける訳でもなく、刀子に話しかけた


「ええ… 私の負けよ」

刀子が悔しさを隠して言葉を残して、戦いは終わった


横島は神剣を消して、木乃香達の元に戻って行く


「横島先生、さっきのは空間転移かしら? それにあなたの剣はどこの流派なの?」

刀子は何も言わないで去る横島に疑問を投げかける


「ええ、あれは空間転移の一種ですよ。 俺の剣は……秘密にしときます。 葛葉先生がデートでもしてくれたら教えますよ」

横島は刀子に必要以上教える気は無い

デートを持ち出して、やんわり話を誤魔化したのだ


刀子は横島の軽い口調に少しムッとしたが、負けた上それ以上は聞けなかった


横島が木乃香達の場所に戻ると…

微妙に空気が重い


木乃香も刹那も笑顔だが、目があまり笑ってない

エヴァはあからさまに面白く無さそうだ


(俺なんかしたか?)

内心考えるが、わからない


(鈍感ね…)

小狐はそんな人間関係を見て心で呟いていた


「さて、呼び出して悪かったな。 お前の好物を買って帰るか」

横島は空気を変えようと、話を変える


そして木乃香から小狐を受け取って、話かける


「コン!!」

小狐は満面の笑顔になり、九本の尻尾は嬉しそうに揺れている

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