その二

刀子と横島はお互い一歩も動かずに、対峙している


「全く…、なんでこんなことになるのやら…。 美人とは仲良くってのが俺のポリシーなんだけどな~」

横島は少し困った表情を浮かべながら軽口を言う


「あなたが九尾を庇うからでしょう!? それに、刹那が認めた実力にも興味があります。 この機会にあなたの実力を確認させて頂きます!」

刀子はやる気のない横島の口調に少しムッとしている

それに…、魔法先生の間でも謎だった、横島の実力に興味があった

原因は横島の実力を知る刹那は言わないし、学園長も説明していないからだ

麻帆良でもトップクラスの実力の、刹那とエヴァが横島と仲がいい

そんな現状から様々な噂が囁かれていたのを横島は知らない


「あいつは俺に会いにきたんだ。 わざわざ会いに来た友人を庇うのは当然だろ? 生まれたばかりのあいつは何も悪いことしてない。 それとも前世での罪まで問う気か?」

問答無用に九尾を退治しようとする刀子に、横島は微かな怒りを感じ初めている


「私の仕事は麻帆良に侵入した危険な存在を排除することです!」

刀子は自分の退魔師としての仕事に誇りを持っているので、貫くつもりらしい


「どうしても譲らない気らしいな…」

横島はあくまでも自分から動かない


「来ないなら、こちらから行きます!」

刀子は夕凪を抜き、真っ直ぐに横島に突っ込んだ


「ハァァッー!!」

刀子は瞬時に夕凪に力を込めて横島に一撃を加える

一度止められてる為、先ほどよりも早く強い力を込めている


横島は無表情で相変わらず微動だにしない

刀子は自分の一撃を避けられないと確信するが…


瞬間、横島の体がゆらりと揺れたかと思うと、刀子の一撃をかわしていた

刀子は内心の驚きを隠しつつ、次々に斬撃を繰り出していく

さすがに峰打ちだが、そのスピードはどんどん上げて斬撃を繰り出している


ズパッ!!

シュパッ!!

刀子の夕凪が空を斬る音が辺りに響く


横島は顔色一つ変えずにゆらりとかわしている

刀子には横島の体術が何かはわからないが、まるで風や水のようで、格闘の手本のような動きだった


(さすがに刹那ちゃんよりは強いな。 パワー、スピード、技のキレは人間にしては見事だ。)

横島は刀子の実力を図り、内心感心していた


(チッ! 完全に見切られてる。 刹那を通して神鳴流を知っているからか…)

刀子は横島の予想以上の実力に一旦距離を開ける



一方、見学している面々は更に驚いている


「刀子さんでもかすりもしないとは…」

刹那は高いレベルの剣での戦いに、思わず見入っていた


「何を驚いている? 横島の実力はお前もよく知っているだろう。 それに、神鳴流では横島には通用せん」

エヴァは横島の戦いがつまらないのか、少しガッカリした様子で説明している


「神鳴流は退魔剣では世界随一だ。 人間より強いモノを相手にする為の剣。 従って、先手必勝。 一撃必殺を基本に置いている。 その為、どちらかと言えばパワー型の剣術だ。 パワー型な分、攻撃はシンプルで読みやすい。 横島の実力があればかわすのは簡単なのだ」

エヴァはわざわざ刹那に教えるように話している

本当は人に教えるのは好きではないが…、横島がわざわざ見せたのを本人が理解しなければ意味がない

その為、戦う横島のかわりに説明したのだ…

案外エヴァは味方には優しいのかもしれない


「私はまだまだ未熟なのですね」

刹那はより高みの力を見せられて、改めて気持ちを引き締める


「ほえ~ 横島さんは相変わらず凄いな~」

「ク~ン…」

木乃香と小狐は素直に感心している


「お前が弱いのではない。 横島が強すぎるのだ。 1対1の接近戦に限定すれば、私でも横島には勝てない」

エヴァは表情が暗い刹那にため息をついて話した


14/100ページ
スキ