その一

横島は先ほど作っていた指輪を手に取って、床に置いた


横島は二、三歩下がって、文珠を作り出して文字を込めた


【魔】【力】【貯】【結】【界】…


五つの文珠を横島は操り、指輪の周りに飛ばした


そして、自分の魔力を封じている指輪を外した…


横島は魔力を高めて言霊を言った


すると、文珠が光り出して魔法陣を描いた…

そしてあっという間に、魔法陣の光りは指輪に集まり、魔法陣も文珠も消えていた…

横島は魔法陣が消えてすぐに、指輪を取り上げて調べるように見た


木乃香と夕映はそんな横島の作業を、珍しそうに見ていた


一方刹那は驚いていた…

横島がほんの数秒で魔法陣を作り魔法を使ったのだから…

陰陽術を少しは使える刹那には、先ほどの術が簡単な術ではないのがわかった

本来必要な呪文の詠唱もなく、高度な術を使ったのに驚いていた

「あの… 横島さんは何故一瞬で魔法を使えるのですか…? かなり高度な術な気がしますが…」

刹那は指輪を確認していた横島に、遠慮しながら聞いた


「ん…? あれは俺の能力だよ。 文珠って言う珠を使うんだ。 それを呪文の詠唱の変わりにするんだ」

横島は刹那に文珠を簡単に説明した


「最も… 今のは魔法じゃなく、魔術だがな…」

横島は説明した文珠の能力に、信じられないような顔で驚いている刹那に苦笑いしていた



横島には呪文の詠唱や魔法陣を描くなどは、必要無かった

そのかわり文珠に込める文字を組み合わせることで、呪文の詠唱の変わりをして、魔法陣を作っていたのだ…

魔力を使えば魔術…

神通力を使えば神術…

それぞれ使い分けも出来ていた


それは過去に横島が、ルシオラの知識を元に、文珠の使い方を研究した結果だった…


文珠の強みは複数合わせると、利用範囲が劇的に広がる点である


横島はそれを魔術や神術に利用したのだ

結果、本来は数百年も修行して覚えるような術を、すぐに使えるようになっていた


「横島さんは凄いですね… 先ほどの術をこの世界の魔法を使えば、複雑な呪文の詠唱が必要ですよ?」

刹那は感心したように話した

その目には憧れが混じっていた


「そんなに凄いのですか…?」

いまいち横島の術が凄いのかどうか、よくわからない夕映が刹那に聞いた

「はい… 術の内容までわかりませんでしたが…」

刹那は苦笑いしていた

素人の木乃香と夕映は、不思議そうに横島と刹那の話を聞いていた


「まあ、術はそのうち魔法を勉強すればわかるさ。 とりあえず木乃香ちゃんの魔力を抑える指輪が出来たよ」


横島は笑顔で木乃香に指輪を手渡した


木乃香と刹那と夕映は珍しそうに指輪に見入っていた


「これをしてれば大丈夫なん?」

木乃香は横島を見て聞いた


「ああ、その指輪はただの指輪じゃない! 木乃香ちゃんの魔力を吸収して貯めるんだ。 そして危機になれば、貯まった魔力の分だけ結界が現れるんだ!」

横島は自信満々な笑顔で、嬉しそうに木乃香に答えた


横島自身…

どこかルシオラに、影響されてるのかもしれない…


「それは凄いですね~ かなり貴重なマジックアイテムですよ」

刹那は指輪を見ていた木乃香に説明した

「そうなん? ウチは横島さんが作った指輪を貰えるだけで嬉しいわ~」

木乃香は本当に幸せそうに微笑んだ


木乃香は指輪をどこの指にはめるか悩んだが…

右手の薬指にした

さすがに左手の薬指は恥ずかしくて出来なかった…


幸せそうな木乃香に、刹那と夕映は少し羨ましかったが…

自分も欲しいとは言えなかった


一方鈍感な横島は、二人の羨ましそうな視線に気づくはずもなかった…


指輪が完成した横島達は修行をする為に、家に戻ろうとしていたが…

「あの… 木乃香ちゃん… ハニワ兵は置いていって欲しいんだが…」

相変わらずハニワ兵を手放さない木乃香に、横島は困ったように話した


ハニワ兵はすっかり木乃香に懐いていて、大人しくしていた…
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