欲から始まる恋もある
「裂けるかと思った。」
「悪い。 初めてだったもんだからつい。」
「でも最後にいい思い出になったよ。 私、今月いっぱいで転校するの。 だから後悔したくなかったんだ。」
全てが終わった頃には街はとっくに夜の闇に包まれていた。
激しい情事の後が生々しく残り赤いシミがシーツにあることに愛野は恥ずかしそうにするも、ここでようやく横島が感じていた違和感の原因を口にした。
「転校って……。」
「私にもっと勇気があれば横島君をあんな扱いにさせることなかったのにゴメンね。」
「いやちょっと待てって! 卒業まであと一年だろ! なんとかならんのか!?」
しかしそれは別れの言葉であり愛野を抱きこのまま付き合うものだとばかり考えていた横島は、あまりの事態に彼女の肩を掴みなんとかならないのかと問い詰めるものの首を横に振られただけであった。
「明日の朝までは私が彼女で居てあげる。 だから横島君は明日になったらまたいつもの横島君に戻って。 大丈夫よ。 もう童貞じゃないから。 きっと私のことなんてすぐに思い出さなくなるくらいモテるわよ。」
愛野は納得がいかないと言いたげな横島に抱きつき子供を諭すように言葉をかけるものの、お互いに顔を向けられないほど二人は号泣していて互いの肩に涙が流れていく。
そしてそれから数日が過ぎると横島にとって二人目に愛した人は笑顔で学校を去って行った。
「横島君、元気ないわね?」
「うん? そっか?」
その後横島はなんとなく気が抜けたようになってしまい令子にどやされたりおキヌに心配されたりしたが一向に変わる様子はなく、あれだけあった煩悩すら消えてしまったかのように大人しくなっていた。
「ねえ、そんなに詩織が居なくなって寂しい?」
「……なんのことだ?」
ただ横島を心配していたのは令子やおキヌばかりではなかった。
クラスでは火が消えたように活気がなくなりクラスメートですら心配していたが、お昼休みに屋上で寝転んでいると愛子が机を担いで現れ横島の隣に座る。
横島はあの日のことを誰にも話してないし横島が知る限り愛野も話してないはずだ。
突然現れて核心に迫ることを言われた横島であるが何故か誰にも言いたくないとの想いから口をつぐむ。
「詩織言ってわよ。 横島君を男にして行くんだって。 今にみんなビックリするほど変わるからって。 彼女、横島君が好きだったのよ。 ずっと。」
「なあ、なんであいつは……。」
「詩織一年の頃に横島君に傘を貰ったって言ってたわ。」
「傘を? そんなこと……。」
しかし愛子は事情をかなり知ってるようで勝手に話し出すと横島は残された疑問を口にするが、それは横島がすっかり忘れていたほど些細なきっかけだった。
土砂降りの雨の日の夕方に学校帰りに横島が可愛いクラスメートに、ちょっといい格好をしようと自分の傘を貸したというただそれだけのことだ。
「本当はお互いに辛くなるから教えないでって言われてたけど知りたい? 詩織の連絡先。」
「分かるのか!!」
「きっと横島君なら私が教えなくても自力で見つけちゃうと思うから教えてあげるわ。 ただし一つ借りよ?」
「サンキュー! 愛子!!」
愛子は落ち込み元気がない横島を見てられなかった。
転向して行った友人との約束を破ってしまうほどに。
そして横島は連絡先のメモを受けとると午後の授業など知るかと言わんばかりに走りだして行ってしまう。
「結局教えちゃったんだ。」
「うん。」
「横島君いい顔するようになったわね。」
「うん。」
「ほら泣かないの。」
屋上に残された愛子は影でこっそり見守っていた友人に声をかけられるも、流す涙で愛子は言葉が出てこなかった。
「人なんて分かんないもんよね。 あの横島君が一度エッチしただけであんな顔するなんて。 先に唾つけとけば良かったかしら?」
友人は泣きじゃくる愛子を慰めながら人が変わるきっかけなんて分からないものだと、遠い友人がいる方角を見ながらしみじみと感じていた。
「悪い。 初めてだったもんだからつい。」
「でも最後にいい思い出になったよ。 私、今月いっぱいで転校するの。 だから後悔したくなかったんだ。」
全てが終わった頃には街はとっくに夜の闇に包まれていた。
激しい情事の後が生々しく残り赤いシミがシーツにあることに愛野は恥ずかしそうにするも、ここでようやく横島が感じていた違和感の原因を口にした。
「転校って……。」
「私にもっと勇気があれば横島君をあんな扱いにさせることなかったのにゴメンね。」
「いやちょっと待てって! 卒業まであと一年だろ! なんとかならんのか!?」
しかしそれは別れの言葉であり愛野を抱きこのまま付き合うものだとばかり考えていた横島は、あまりの事態に彼女の肩を掴みなんとかならないのかと問い詰めるものの首を横に振られただけであった。
「明日の朝までは私が彼女で居てあげる。 だから横島君は明日になったらまたいつもの横島君に戻って。 大丈夫よ。 もう童貞じゃないから。 きっと私のことなんてすぐに思い出さなくなるくらいモテるわよ。」
愛野は納得がいかないと言いたげな横島に抱きつき子供を諭すように言葉をかけるものの、お互いに顔を向けられないほど二人は号泣していて互いの肩に涙が流れていく。
そしてそれから数日が過ぎると横島にとって二人目に愛した人は笑顔で学校を去って行った。
「横島君、元気ないわね?」
「うん? そっか?」
その後横島はなんとなく気が抜けたようになってしまい令子にどやされたりおキヌに心配されたりしたが一向に変わる様子はなく、あれだけあった煩悩すら消えてしまったかのように大人しくなっていた。
「ねえ、そんなに詩織が居なくなって寂しい?」
「……なんのことだ?」
ただ横島を心配していたのは令子やおキヌばかりではなかった。
クラスでは火が消えたように活気がなくなりクラスメートですら心配していたが、お昼休みに屋上で寝転んでいると愛子が机を担いで現れ横島の隣に座る。
横島はあの日のことを誰にも話してないし横島が知る限り愛野も話してないはずだ。
突然現れて核心に迫ることを言われた横島であるが何故か誰にも言いたくないとの想いから口をつぐむ。
「詩織言ってわよ。 横島君を男にして行くんだって。 今にみんなビックリするほど変わるからって。 彼女、横島君が好きだったのよ。 ずっと。」
「なあ、なんであいつは……。」
「詩織一年の頃に横島君に傘を貰ったって言ってたわ。」
「傘を? そんなこと……。」
しかし愛子は事情をかなり知ってるようで勝手に話し出すと横島は残された疑問を口にするが、それは横島がすっかり忘れていたほど些細なきっかけだった。
土砂降りの雨の日の夕方に学校帰りに横島が可愛いクラスメートに、ちょっといい格好をしようと自分の傘を貸したというただそれだけのことだ。
「本当はお互いに辛くなるから教えないでって言われてたけど知りたい? 詩織の連絡先。」
「分かるのか!!」
「きっと横島君なら私が教えなくても自力で見つけちゃうと思うから教えてあげるわ。 ただし一つ借りよ?」
「サンキュー! 愛子!!」
愛子は落ち込み元気がない横島を見てられなかった。
転向して行った友人との約束を破ってしまうほどに。
そして横島は連絡先のメモを受けとると午後の授業など知るかと言わんばかりに走りだして行ってしまう。
「結局教えちゃったんだ。」
「うん。」
「横島君いい顔するようになったわね。」
「うん。」
「ほら泣かないの。」
屋上に残された愛子は影でこっそり見守っていた友人に声をかけられるも、流す涙で愛子は言葉が出てこなかった。
「人なんて分かんないもんよね。 あの横島君が一度エッチしただけであんな顔するなんて。 先に唾つけとけば良かったかしら?」
友人は泣きじゃくる愛子を慰めながら人が変わるきっかけなんて分からないものだと、遠い友人がいる方角を見ながらしみじみと感じていた。
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