新しき絆

時間は魔鈴が横島を見つける少し前にさかのぼる…


横島は何も無い闇の中に一人居る感覚だった

体の感覚も無く、何も見えないし聞こえない

横島は混沌とする闇の中で、思い出すのは失ってしまった恋人と…

いつも側で支えてくれる女性であった


2人は横島の前に現れては消えていく

横島は必死に叫び追いかけたいが、体が動かないし声も出ない


横島は絶望と恐怖で狂いそうだった


そんな時…、また魔鈴が現れる


「横島さん!! 横島さん!!」

魔鈴は見たことが無いほど慌てた様子で、横島は抱きしめられる


「横島さん! 大丈夫ですか!!」


今度は消えない魔鈴から、横島は闇の中で信じられないほど暖かい温もりを感じた


「魔鈴…さん?」

魔鈴の温もりに横島は初めて声が出た気がした


「横島さん! 良かった… 本当に良かった……」

魔鈴は横島を抱きしめたまま泣いている

魔鈴の熱い涙が横島に体の感覚を蘇らせる

「魔鈴さん…、なんで泣いてるんすか?」

横島は不思議そうに魔鈴を見て、感覚の戻った手で頭を撫でる


「もう、会えない気がしました。 横島さんが、消えてしまいそうで…。 私を置いて行かないで下さい!」

魔鈴は泣きながら必死に話している


「夢を見てました… ルシオラと魔鈴さんが居なくなる夢を… 何度頑張っても声も出ないし、体も動かない…。 怖くて怖くてどうしょうも無い夢を……」

横島は魔鈴の温もりを感じながら先ほどのことを話している


「魔鈴さん……、行かないで下さい。 俺がワガママ言える立場じゃないけど、イギリスに行かないで下さい」

横島は二度と魔鈴から離れたく無い

そう願うと、自然に言葉がでていた


「横島さん? 私イギリスには行きませんよ? 昼に話したじゃないですか…」

魔鈴は涙を拭うと、不思議そうに横島を見る

まさか、そんなことを言われるとは思わなかったのだ

確かに昼に行かないと言った記憶があるのだから…


「……良かっ…た」

横島はそのまま魔鈴に寄りかかり気を失う


「横島さん!!」

魔鈴は再び横島に叫ぶが返事は無い

横島の体は信じられないほど冷たい

「まずいわ… 体温が冷えすぎてる」

魔鈴は横島にもらった、イヤリングの文珠を2つ使い転移する

【転】【移】


転移した先は魔鈴の店である

魔鈴はすぐさま横島を自宅に運ぶ


「どうしたのにゃ、魔鈴ちゃん?」

夜中に慌てる魔鈴に驚き黒猫がやって来た


「横島さんの体温が冷えすぎてるの! 魔法薬を持って来て!」

魔鈴は黒猫に話すと、横島を自分の寝室に運ぶ

横島をベッドに寝かせた魔鈴は、横島の上着とズボンを脱がして、冷え切っている手足から体をさするようにゆっくり温める


「魔鈴ちゃん、持ってきたにゃ」

黒猫は慌てて、薬と水を持って来る


「早く飲ませないと…」

魔鈴は薬と水を自分の口に含むと…

意識の無い横島に口移しで飲ませる


ゴクリ…

ゴクリ…


横島の喉を薬と水が通ったのを確認すると、魔鈴は再び横島の手足を温める


「横島さん! 死なないで!!」

魔鈴は涙をこらえながら必死に横島を温め続ける……



次の朝…

横島が目を覚ますと、知らない部屋であった

だが、部屋のインテリアは中世ヨーロッパのような感じで魔鈴の家だと理解する


「俺…、なんで魔鈴さんの家に居るんだ?」

横島は昨日の記憶を思い出そうとするが、あまり思い出せない

「確か…、東京タワーに行った気がするんだが…」

いくら考えても思い出せず周りを見ると…

魔鈴が椅子に座り、横島の手を握り締めたまま寝ている


「どうやら夢を見てるみたいだな…」

横島は思い出せないのも、魔鈴が寝てるのも夢だと考えた


「う…ん…、横島…さん?」

横島の一人事に魔鈴は目を覚まし横島を見つめる

2人は見つめ合い沈黙が走る


すると魔鈴の目が急に大きく見開き、起き上がると横島を抱きしめる


「横島さん… 気がついたんですね!! 助かったんですね!!」

魔鈴は横島を抱きしめたまま、嬉しそうに泣いている

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