番外編・動き出す心
目を覚ますとそこは彼女には見知らぬ場所だった
意味もわからぬまま近くに人間の気配を感じ、静かに様子を伺う
(あいつは私を殺そうとした奴)
見覚えのある横島の顔に憎しみが込み上げてくるが、状況の把握が先だと周囲を伺っていく
お世辞にも綺麗と言えない部屋の真ん中に彼女は居た
人間の匂いの染み付いた毛布に包まれた彼女の前には、皿に盛られたドッグフードと水がある
(あいつ…… 私を助けたの?)
憎しみや恨みは消えないが、何故人間が自分を助けたのか疑問も感じる
『気味が悪い』それが彼女の第一印象だった
あの状況で何故自分を助けるのかわからないし、何かの罠かと疑ってもいる
そんな状況で横島は、窓際で静かに空を見上げていた
もう日が暮れた夜にも関わらず、明かりもない部屋で無言のまま空を見上げる横島はどこか異様である
そんな横島に対して、彼女は動けないまま時間だけが過ぎていった
どれだけ時間が過ぎただろうか、突然横島が動き出して彼女に近付いていく
「起きないな 文珠の治療じゃ力は回復しないしな」
寝たフリをする彼女に、横島は迷いながらも霊力を注ぎ込み始める
横島には傷ついた妖怪をどうすればいいのかわからない
怪我を文珠で治して様子を見たが、なかなか起きない九尾に不安になり霊力を注ぎ込む事を始めたようだ
かつてシロにもした事から、悪い事ではないだろうと考えたようである
ビクッ!!
突然の横島の霊力に、彼女は殺されるのかと思い動いてしまう
そしてそのまま横島の手を引っかき、部屋の隅に逃げていく
「起きたか。 とりあえず飯を食え。 言葉わかってるんだろ?」
突然手を引っかかれた横島だが、気にした様子もなく彼女から離れて座る
先程用意したドッグフードと水に視線をやり食べろと言うが、彼女は横島を睨みつけたまま警戒するだけだった
「ドッグフードは嫌いか? シロは好きだったからお前も食うかと思ったんだが…… 毒なんて入ってないぞ?」
優しく軽い口調で話し掛ける横島だが、彼女は変わらぬままである
憎しみや悔しさの入り混じった瞳で横島を睨み続ける
(さぞ憎いんだろうな…… まだ小さいのに……)
彼女の憎しみの視線に、横島は胸が苦しくなる気がした
生まれて間もないのに殺されそうになった九尾の運命に、無意識に三姉妹の運命を重ねて感じたのかもしれない
「気持ちはわかるが、今は生きる事を考えろよ。 俺に復讐したければ生きて強くなれ。 まあ、俺としては将来美人になって恩返しの方がいいけどな」
笑って冗談のように語る横島に、彼女は少しキョトンとしてしまう
(何を考えてるの? どこまで本気なの?)
突然の言葉に目の前の憎かった人間がわからなくなる
嘘には感じないが本気とも思えない
この時彼女の中で、横島の印象が『気味の悪い人間』から『不思議な人間』に変わっていた
そんな九尾から視線を離し、横島は台所でゴソゴソとお湯を沸かしはじめる
(襲っては来ないか……)
隙を見せたらもしかしたら襲われるかもしれないと思った横島だが、動かぬ九尾にどうすればいいかわからなかった
意味もわからぬまま近くに人間の気配を感じ、静かに様子を伺う
(あいつは私を殺そうとした奴)
見覚えのある横島の顔に憎しみが込み上げてくるが、状況の把握が先だと周囲を伺っていく
お世辞にも綺麗と言えない部屋の真ん中に彼女は居た
人間の匂いの染み付いた毛布に包まれた彼女の前には、皿に盛られたドッグフードと水がある
(あいつ…… 私を助けたの?)
憎しみや恨みは消えないが、何故人間が自分を助けたのか疑問も感じる
『気味が悪い』それが彼女の第一印象だった
あの状況で何故自分を助けるのかわからないし、何かの罠かと疑ってもいる
そんな状況で横島は、窓際で静かに空を見上げていた
もう日が暮れた夜にも関わらず、明かりもない部屋で無言のまま空を見上げる横島はどこか異様である
そんな横島に対して、彼女は動けないまま時間だけが過ぎていった
どれだけ時間が過ぎただろうか、突然横島が動き出して彼女に近付いていく
「起きないな 文珠の治療じゃ力は回復しないしな」
寝たフリをする彼女に、横島は迷いながらも霊力を注ぎ込み始める
横島には傷ついた妖怪をどうすればいいのかわからない
怪我を文珠で治して様子を見たが、なかなか起きない九尾に不安になり霊力を注ぎ込む事を始めたようだ
かつてシロにもした事から、悪い事ではないだろうと考えたようである
ビクッ!!
突然の横島の霊力に、彼女は殺されるのかと思い動いてしまう
そしてそのまま横島の手を引っかき、部屋の隅に逃げていく
「起きたか。 とりあえず飯を食え。 言葉わかってるんだろ?」
突然手を引っかかれた横島だが、気にした様子もなく彼女から離れて座る
先程用意したドッグフードと水に視線をやり食べろと言うが、彼女は横島を睨みつけたまま警戒するだけだった
「ドッグフードは嫌いか? シロは好きだったからお前も食うかと思ったんだが…… 毒なんて入ってないぞ?」
優しく軽い口調で話し掛ける横島だが、彼女は変わらぬままである
憎しみや悔しさの入り混じった瞳で横島を睨み続ける
(さぞ憎いんだろうな…… まだ小さいのに……)
彼女の憎しみの視線に、横島は胸が苦しくなる気がした
生まれて間もないのに殺されそうになった九尾の運命に、無意識に三姉妹の運命を重ねて感じたのかもしれない
「気持ちはわかるが、今は生きる事を考えろよ。 俺に復讐したければ生きて強くなれ。 まあ、俺としては将来美人になって恩返しの方がいいけどな」
笑って冗談のように語る横島に、彼女は少しキョトンとしてしまう
(何を考えてるの? どこまで本気なの?)
突然の言葉に目の前の憎かった人間がわからなくなる
嘘には感じないが本気とも思えない
この時彼女の中で、横島の印象が『気味の悪い人間』から『不思議な人間』に変わっていた
そんな九尾から視線を離し、横島は台所でゴソゴソとお湯を沸かしはじめる
(襲っては来ないか……)
隙を見せたらもしかしたら襲われるかもしれないと思った横島だが、動かぬ九尾にどうすればいいかわからなかった