新しき絆

鍋の中のすき焼きは瞬く間に無くなり、魔鈴はまた新しい食材を入れて追加で作っていく


「それにしても、本当に美味いな~ 俺はあちこち旅をしてるが、ここのメシが一番美味いよ」

雪之丞は次のすき焼きが煮えるまで、一息ついている


「ありがとうございます。 そう言って頂けるのは嬉しいですよ」

魔鈴は少し照れたように笑った

元々お世辞などとは無縁の雪之丞のセリフは、素直に嬉しかったのだ


「魔鈴さんは料理のプロだからな~ 和食も最高に美味いよ」

横島も雪之丞の意見と同じで、素直な感想を言っている


「フフフ… 誉めても何も出ませんよ?」

魔鈴は横島の言葉に顔が微妙に赤い

横島はそんな魔鈴を見ていて、一瞬二人は見つめ合う


「お熱いわね… 二人共」

タマモはからかうように、冷静な突っ込みを入れた


タマモの言葉に、横島と魔鈴は顔を真っ赤にしている

「さっ… そろそろ食べれますよ!」

魔鈴はちょうど出来たすき焼きで話をそらす


「おっ! 食うぞ~」

横島も同じくすき焼きに逃げる


「逃げたわね…」

タマモは面白そうに横島と魔鈴を見て、自分もまた食べ始める


「なんか、あいつら新婚みたいだな」

雪之丞は横島と魔鈴を見て小声で呟く


「最近はいつもこんな感じよ」

タマモにだけは、雪之丞の呟きが聞こえていたようだ


「どうしたんですか?」

魔鈴は不思議そうに、雪之丞とタマモを見ている


「なんでもないわよ」

タマモは笑ってごまかした


雪之丞も、あまり突っ込まない方がいいと見て、また食べ始める


「美味いでござる!」

そんな中、シロは一人肉に夢中だった


その後も横島と雪之丞とシロの三人は、凄まじい勢いでがっついて食べていく…


魔鈴とタマモは普通に一人分くらい食べたのに対して、横島達三人は合わせて8~9人分は食べていた

食べた横島達も凄いが、それだけの量を予想して用意した魔鈴も凄いのは、タマモしか気がついていない


(さすがに魔鈴さんね… 普通これだけの量を予想は無理だわ…)

すき焼きをお腹いっぱい食べて幸せそうな横島達を、半分呆れながらタマモは見ている


その後、横島と雪之丞と魔鈴は酒を飲み始めた

シロとタマモはまだ子供な為、ジュースだ


横島達はゆっくり酒を飲みながら、話をしたりトランプをしたりしていた

大晦日な為、テレビは特番が入っていたが、横島達が見るような番組は入っていない


トランプで勝負をすると、雪之丞とシロがどんどん熱くなっていく


しかし、肝心の結果は…

シロと雪之丞が圧倒的に弱かった


横島は器用で駆け引きなどがよく、あまり負けない

魔鈴は可もなく不可もなくと言った感じだが、負けることは少ない

タマモは横島以上に強く、かけ引きは得意な上、妖狐としての感覚があるため全く負けてない


それに比べてシロは弱かった

表情が顔にすぐでる上、駆け引きなど全く出来ない


同じく雪之丞も弱かった

こちらは顔には出ないが、性格と同じく真っ直ぐな戦法のみな為、横島達には丸わかりなのだ



「う~! 勝てないでござる!」

シロはあまりにも勝てない為、吠えるように叫ぶ


「馬鹿犬、叫ばないの! あんたは顔に出過ぎなのよ… それにもう少し考えてやりなさい」

タマモは呆れたようにシロに言う


「拙者は狼でござる! それに拙者は考えてるでござる!」

シロはムキになって答えるが…


「シロと雪之丞は単純すぎるんだよ… もう少し裏をかかないと勝てないよ」

横島は苦笑いしてシロとタマモの口ケンカを止める


「俺は裏をかくとかは苦手なんだ!」

もう一人の熱くなっていた雪之丞が横島に叫ぶ


「まあまあ、ゲームですし、みんなそんなに熱くならないで下さいね」

魔鈴もシロと雪之丞を落ち着けようと仲裁に入った

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