新しき絆

「ママ…、本気なの?」

令子は脱税や隠し財産の話に、顔色が真っ青で冷や汗がダラダラだった


「本気です! 来月の給料から上げなさい! 横島君の能力を考えれば、年収10億でも高くはないわ」

美智恵は険しい表情を変えずに話していた


令子は美智恵が本気なのがわかると考えだした

今の横島は月に数日しか仕事をしない

とりあえず春まで時給を上げても、たいした出費にならない

春からは理由を付けて削ればいい

そう考えた


「わかったわよ… とりあえず春までは、時給一万円でいい?」

令子は本当に嫌そうに顔を歪めて話した

やはり、横島に人並みのお金を渡すのはどうしても嫌だった…


「そうね… いきなり億単位のお金を渡すのも変ね。 春までは時給一万でいいわ。 春からは正社員としてしっかり払うのよ!」

美智恵は逆に、自然に横島の給料をあげるなら、段階的がいいと考えた


こうして、令子と美智恵は反対の思惑を抱えつつ、横島の時給を上げることで合意した


と言うか、美智恵が令子を押し切ったのだ
令子はこの世の中に怖いモノはないが、美智恵にだけは弱かった


美智恵は横島と魔鈴が恋人だと勘違いをしたまま、横島を引き止める手段をとっていた



次の日、令子は美智恵に連れられて、南米の父親の元に向かった

令子は最後まで嫌がったが、無理やり連れられて行ったのだ

正月くらいは家族で過ごそうと…


令子と父親は、何年も会っておらず、家族の関係は微妙だったが、美智恵はこの機会に家族関係も改善しようとしていた



そして大晦日…


横島とシロとタマモは魔鈴の家に居た

令子が居なくなったのを知った魔鈴が、正月を一緒に過ごそうと誘ったのだ


シロとタマモは喜んで誘いにのり、人工幽霊には人狼の里に行くと嘘をついていった

横島も予定が無い為、誘いを受けていた


「シロ、今年は人狼の里に帰らないのか?」

魔鈴の家でテレビを見ながらくつろいでいた横島は、少し不思議そうにシロに聞いた


「少し前に、魔鈴殿と帰ったゆえ、今回は辞めたでござる!」

シロは魔鈴が用意したおやつの、フライドチキンを食べながら答えていた 
 
「そうか… 人狼の里は遠いからな~」

横島は直接行ったことはないが、だいたいの場所は知っていた


「長老が、今度は先生にも来て欲しいと言ってたでござる!」

シッポを振りながらシロは話していた


「この前はゆっくり出来ませんでしたからね… 落ち着いたら一度みんなで挨拶に行きましょうね」

魔鈴は横島に紅茶を出して横島の隣に座った


「そうだな… 長老には無理を言ったからな~ ドッグフードでも持ってかないとな~」

横島は今回、自分のワガママでシロを預けてもらったと考えていた

令子と違い、人狼に自分が信頼されてないと思っていたのだ


実際は、人狼の長老は横島と令子の二人で合わせて、信頼していたのだ

前の横島は、優しいが頼りない

一方令子は頼りになるが、危ない人間だ


人狼の長老は、二人を合わせれば大丈夫だろうと考えて、シロを預けたのだった


「でもドッグフードが好きなんて、犬みたいね…」

タマモはシロを見てからかうように話した


「今、拙者を見てたでござるなっ? 拙者は狼でござる!」

シロはムキになって言い返した


「お前らその会話好きだな~」

横島は面白そうに笑っていた


「拙者は本当のことを言ってるだけでござる! 狼を犬と言われるのは我慢出来ないでござる!」

シロは横島にもムキになっていた


「わかってるよ。 そうムキになるなって…」

横島は苦笑いしてシロをなだめた


魔鈴とタマモは、そんな横島とシロを楽しそうに見ていた


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