新しき絆

次の日、横島を見張っていた人がある場所に居た


そこは、オカルトGメン日本支部


美智恵の部屋だった


その人は私服のスーツを着ており、Gメンの職員ではないようだった


「これが、一週間のターゲットの行動調査書ですよ。 ターゲットは突然消えたりするんで、行動の把握は完璧ではありませんよ」

その人が美智恵に書類を渡して話していた


「そう… 高木君、わざわざごめんね」

美智恵は書類を見ながら労いの言葉をかけた


「別に仕事ですからいいですが… 何者ですか? わざわざ俺に尾行させるなんて… おたくなら、尾行くらいできる人材はたくさんいるでしょう? それにえらく勘の鋭いターゲットで、かなり尾行に苦労しましたよ」

高木と呼ばれた男性は美智恵の表情を伺いながら聞いた


「たいした人じゃないわ。 娘の事務所のバイトの子よ。 個人的に少し行動が知りたかったのよ」

美智恵は表情を変えずに話していた


「あれが核ジャック事件を起こした、魔族を倒した真の英雄ですか…」

高木はニヤリと笑みを浮かべていた
 
 
「あなた… 何故それを知ってるの!?」

美智恵は少し表情を曇らせていた


「真実とは隠しきれないものですよ…」

高木は意味ありげな笑みで美智恵を見ている


「いくら欲しいの?」

美智恵は険しい表情になり高木を睨んだ


「通常の料金で構いませんよ。 俺はこれ以上関わりませんから…」

高木は営業スマイルで美智恵に話した


「どういう意味かしら?」

美智恵は怪訝な表情で見ている


「ご存知でしょう? 彼の両親を… 両親がかなり動いてます。 これ以上あなたに関われば、私もタダでは済まないですからね」

高木はククク…

と言った笑いを浮かべていた


「そう… じゃあ、これで全て忘れて頂戴」

美智恵は分厚い封筒を渡した


「確かに… 二度とお目にかかることは無いでしょう。 お元気で…」

高木は中身を確認して、そんな言葉を残して帰った


美智恵は書類の中身と、高木との会話を思い出して考えていた


横島がこの一週間でよく行ってるのは、自動車学校と…
 
 
魔法料理魔鈴


他は自宅に居るか、行動不明


「行動不明は恐らく文珠ね…」

美智恵は呟きながら、書類を見ていく


特に気になったのは、クリスマスイブの日

横島は昼から泊まって、次の日の夜まで魔鈴の店に居た


「どういうこと… あの二人デキてるの?」

美智恵は顔色が悪くなっていた


ほぼ毎日、夜は魔鈴の店で食事しているみたいだった…


クリスマスイブに泊まるなど、確実に恋人だろうと思った


「どうりで、令子に冷たい訳だわ…」

美智恵は頭を悩ませた


そして、今後のことを一から考えて直していた



この時、美智恵は致命的なミスを犯していた…


意味ありげな発言をした高木を放置していたこと


そして、中途半端な情報で横島と魔鈴を恋人と判断したことだった



一方Gメンの建物を出た高木は、ある喫茶店に入っていた


向かいに座るのは、なんと大樹の部下クロサキだった


「で… どうだった?」

クロサキは無表情で高木に話しかけた


「これと同じ書類を渡しただけだよ。 依頼通り、関連人物の名前は消してある。 これでわかるのは、横島忠夫と魔鈴めぐみが恋人らしいと言う事実だけだ」

高木は先ほどとは変わって少し怯えた表情で、クロサキに書類を渡した


高木が話の中で言った関連人物とは、シロとタマモと雪之丞のことだ


あの報告書には本来、魔鈴の店に出入りする名前に、シロとタマモと雪之丞があったのだった


「そうか。 本当だろうな?」

クロサキは無表情で高木を睨む


「嘘はねえよ! あんた達を敵に回すほど馬鹿じゃねえ…」

高木は慌ててクロサキに言った


「わかった。 これはとっておけ」

クロサキは美智恵が渡した封筒の倍はあるだろう、札束の入った封筒を置いて消えていった


「ふー、何がどうなってるか知らねーが… さわらぬ神に祟りなしってね… おっかねー連中だな」

高木は封筒を懐にしまってホクホク顔で消えていった


59/100ページ
スキ