次の日

横島が目を覚ましたのは、お昼近い時間だった


「あれ… そうか。 魔鈴さんの家に泊まったのか」

横島は見慣れない部屋に一瞬頭が働いて無かった


横島は二日酔いとまではいかないが、あまり体調は良くなかった

「はしゃぎすぎたな…」

あんなに楽しかったのはいつぶりだろうと思った


ルシオラを亡くして以来、飲み過ぎるなど無かったのに…


横島はベッドから出て、魔鈴を探して部屋を出た


横島がうろうろと探していると、魔鈴の姿は台所にあった


魔鈴はすでにいつもの服を着て、昼食を作っていた


「あら、横島さんおはようございます」

魔鈴はすでに元気そうで、笑顔で横島に挨拶した


「魔鈴さん、おはようございます。 すいませんでしたお世話になって…」

横島は笑顔で返事して、魔鈴に泊まったお礼を言った


「いいんですよ。 それより座って下さい。 ご飯にしましょう」

魔鈴はそう話して、機嫌よく料理を作っていた


横島は美味しそうな匂いに食欲が湧いてきて、魔鈴に進められるままに椅子に座った


魔鈴はすぐに横島の前に、料理を並べていく

朝方まで飲んでいた横島の為に、魔鈴が作ったのはお粥だった

その他にも胃に優しいおかずを並べて、二人で遅い朝食をした

「どうぞ、食べて下さい」

「いただきます！」

二人はそのまま食べ始めた


魔鈴の料理は、飲み過ぎた横島には優しかった

詳しくはわからなかったが、いろいろ体にいい物が入ってるようだ


「優しい料理っすね～ 食べやすくて体に染み込んでいくみたいっすよ」

横島はお粥をおかわりしてから、魔鈴に話していた


「ふふ… ありがとうございます。　これも魔法料理ですからね」

魔鈴は嬉しそうに横島を見ていた


魔鈴は横島が、美味しそうに食べるのを見るのが好きだった

上品とは言えない食べ方だが、本当に美味しそうに食べる横島は見ていて幸せだった


「魔鈴さんの料理は一番うまいっすよ！ 魔鈴さんを嫁にもらう男が憎いっすよ！！」

横島はなんの照れも無く話していた

そして、相手も決まってない、未来の魔鈴の結婚相手を想像して睨んでいた


「そんな… 一番だなんて～」

魔鈴は横島に真っ直ぐ見つめられて言われた為、照れていた


「横島さんさえよければ、ずっと作ってあげますよ♪」

魔鈴は顔を微妙に赤らめて横島を見つめていた


「うっ～ 魔鈴さんは本当に優しいっすね！」

横島は素直に感動していた

そして、鈍感な横島は魔鈴の言葉の意味を理解してない


「個人的に料理を作ってあげてるのは、横島さんだけですよ！」

魔鈴は横島が、自分の言葉を理解してないことに苦笑いした

そして、ちょっと拗ねたように横島を見つめて、ハッキリと言ったのだ


「本当っすか～！？ 魔鈴さんの料理を独り占め出来るなんて、嬉しいっすよ」

横島は魔鈴が、自分だけにと言った言葉に、一瞬ドキッとしていた

そして、自分を落ち着けるように笑って話していた


それからも横島と魔鈴はそんな感じで楽しそうに食事をしていった


そして魔鈴は朝食が終わると、店の開店の為準備に行った


今日はとくに予定の無かった横島は、昨日に引き続き店を手伝って、店内の掃除から厨房の雑用まで、器用にこなしていた


昨日のクリスマスイブとは違い、今日はそれほど忙しく無かったので、二人は話をしながらゆっくりした仕事をしていた


だが、そんな魔鈴の店を遠くから見つめる人が居た

その人は離れた場所に車を停めて、中の様子をうかがっていた


横島と魔鈴はシロとタマモの件に目処がたったので、周囲にたいする警戒が緩んでいて気が付かなかった……


その日横島は、閉店まで店を手伝って、夕食を食べて帰った



そして魔鈴の店を見張っていた人は、横島がアパートに帰るのを見届けて、どこかに去っていった