番外編・動き出す心

その頃彼女は必死に逃げ道を探していた

森を包囲するかのような人間の匂いと敵意に、彼女の本能が逃げろと告げている


(なんで!!)

狙われる理由が彼女にはわからない

前世の事もあり人間は好きじゃないが、かと言って前世の恨みを晴らそうとも思わないのだ


(どうして!!)

せまりくる恐怖と戦う彼女は全てが憎かった

この世界の全てが敵に見えていた



「横島君とおキヌちゃんは、ここで結界に捕まった妖怪を退治して。 いい油断しちゃダメよ」

一方横島は何故か表情が優れない令子に言われるまま、追い込み地点で妖怪が現れるのを待っている

令子が作成した捕獲ようの結界は、通常の除霊よりも本格的なものだった

自衛隊の数と規模といい、相手がよほど強力な妖怪だと思う



「官房長官、待って下さい! これでは妖狐に人間は敵だという印象を与え、むしろ危険を増大させるだけです!」

そして現地対策本部では美智恵が到着して、政府首脳の説得をしている

人間と関わらない妖怪を一方的に退治する危険性を、政府は理解してない

力や知恵のある妖怪ほど人間と敵対しないのは、オカルト業界では常識である

ただでさえ自然破壊や過度な妖怪の迫害で人と妖怪の関係は昔より悪化しているのに、これでは世界中の妖怪を人間の敵に回すようなものだった


「オカルトGメンの言う事は信用ならないと言う者も居るが? ザンス過激派によるテロ事件の醜態に加え、先の核ジャック事件では甚大な被害を防げなかったのは君達だろう? 我々は危険な芽は早めに潰さねばならんのだ」

政府首脳は美智恵の言葉を、まるで信じてないようである

それと言うのもオカルトGメンが日本に設立して以来複数回事件があったが、オカルトGメンが単独で解決した事件はほとんどない

死津藻比女やザンス過激派によるテロ事件は、令子が解決に導いたものだと認識されており

特にザンス過激派によるテロ事件においてのオカルトGメンの行動は、政府の印象を著しく悪化させていた

それにアシュタロス戦での美智恵の行動もあり、美智恵の言葉をそのまま信じる政府関係者は少なかった


「クッ……」

「もういい。 我々は民間GSを雇って日本政府として行動している。 ICPOには関係ない」

言葉に詰まる美智恵に見切りをつけた政府首脳は、そのままその場を後にしていく


「先生、せめて民間GSを止めれば今日の作戦を中止させられるのでは?」

悔しそうな美智恵に対し西条は、協力しているGSの方が説得しやすいと考えていた

GSが居なくなれば、とりあえず今日の行動は止められると読んでいるが……


「令子ちゃん……」

協力しているGSを探しに行った二人が見たのは、当然令子である


「何してるのあなたは!!」

「いや~、知らなかったのよね…… 契約しちゃったし、今更後には引けないわ。 ゴメンママ!!」

怒り心頭の美智恵に対して令子は、引き攣った表情で言い訳をして逃げていく


「嵌められたわ。 金に目が眩んで引き受けちゃったけど、あんな裏があったとは……」

自分が政府に嵌められたと気付いてる令子だが、今更後には引けなかった

アシュタロス戦も記憶に新しい今止めたら、違約金だけでは済まないだろう

相手は日本政府なんだし、ここで止めれば今後も目をつけられる可能性が高い

問題が多いのも理解するが、自分が政府に嫌われてまで守る理由は令子にはなかった


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