魔鈴達が人狼の里に行き美智恵が動き出してしばらくしたその日は、１２月中旬だった


横島は現在週に１日美神事務所でバイトをしていた


少し前に、バイトを減らしたのだ…


令子は散々文句を言うが、横島は仕送りを増やしてもらったからと、嘘をついてバイトを減らしていた…


問題があればタマモがすぐに知らせることにしていたため、横島はこの事務所に来る意味は無くなっていたのである


横島は今、週に１日のバイトで美神事務所に居た


「横島クン、冬休み中はもう少し来れないかしら…？」

令子は事務所のソファーで暇そうに漫画本を読んでいた横島に話しかけた


「冬休みっすか… ちょっと無理っすね～」

横島は令子に怯えたような表情で答えた


「なんで無理なの！ 荷物持ちが居ないと大変なのよ！！」

令子は額に青筋を浮かべて横島に怒鳴った


「いや… 冬休みは車の免許取りに行かなきゃならないんで… 無理っすよ… 荷物持ちが欲しいならバイト増やしたらとうっすか？」

横島は前から考えていたのだ

　
令子は冬休みにこき使おうとするだろう…

それを断る理由を…


免許は実際どうでも良かったが、理由にはちょうど良かった…


「免許！？ そんなのどうでもいいからバイトに来なさい！ 新しいバイトなんてすぐに決まんないでしょう！」

令子は怒りが増してきて、今にも横島をシバきそうな感じだった…


最近横島はめったに来ない

しかも、来ても令子に関わる時間は少ない

仕事が終わればすぐに帰るし…

セクハラもたまにするが、昔に比べて勢いが減っていた…


令子はそれがストレスになっていた

令子は自分が一番でなければ気が済まない

横島の自分に対する感心が微妙に減ってきていると感じた為機嫌が悪かった…


最も…

前のように戻れば、セクハラなどに怒りシバくのだが…


どちらにしても、面倒な女である


横島は怯えたようになり誤りだす


「すんません！ 免許はとらないとお袋に殺されますから… 冬休みはどうしても無理っす！」

横島は土下座で何度も謝っていた


「クッ… わかったわよ！ 勝手にしなさい！」

令子は不機嫌そうに部屋を出ていった


驚いたおキヌが令子を追ったが…

どこかに出かけたようだ


おキヌは困った顔で部屋に戻ってきた


「おキヌちゃん、今日の仕事はどうするって？」

横島は苦笑いしておキヌに聞いた


「今日はキャンセルするそうです…」

おキヌはそう話して、依頼者に電話した


「じゃあ、俺は帰るよ」

横島はおキヌに言葉少なく話して事務所を出た


「横島さん…」

帰ろうとした横島をおキヌが呼び止めた

「ん…？ どうしたの？」

横島は不思議そうに振り向いた


「ご飯食べて行きませんか？」

おキヌは最近横島とまともに話をしてない

少し話す時間が欲しかった

「うーん… いいや… 疲れてるから帰って寝るよ」

横島は言葉少なく帰っていった


おキヌは帰る横島をしばらく見つめていた…


最近、事務所の中が昔と変わったと感じていた…


悪いことが無ければいいが…

おキヌは横島の後ろ姿を見ながら祈っていた

そして…


そんな令子とおキヌを屋根裏から静かに見ていたのは、シロとタマモだった…


「シロ… 散歩にでも行きましょうか」

タマモはシロに話して二人事務所を出た


シロとタマモは、魔鈴の店に向かいながら話をしていた


「美神殿とおキヌ殿は先生が変わったのを感じ始めてるでござるよ… いいのでござるか？」

シロは珍しく大人しくタマモに話していた


シロも最近、横島や美神達をよく見ていたのだ


「あんたでも気がついてるのね… あれから一年以上たつしね… いい加減気がつき始めるわよ」


タマモは令子やおキヌの対応が予想の範囲だったので冷静だった…