新しき絆

横島と魔鈴は並んで街を見ていた


「まさか俺以外に此処に来る人がいるとはな~」

横島は不思議そうに言った


「あの戦い… 人類が勝てたのは、横島さんとルシオラさんのおかげです。 私は真実を知る一人の人間として、此処に来たんですよ」


魔鈴は横島を見て微笑んだ

(それに… どんな人か知りたかったんです… 横島さんの愛した人を…)

魔鈴は心の中で呟いた

この数ヶ月…

魔鈴は横島を見てきた

そして、知りたかったのだ…

横島が今でも愛してる人を…


「ルシオラの事を、覚えている人が俺以外にも居たんですね… なんか、嬉しいっすよ」

横島は笑って魔鈴に話した

それは横島の本心だった…

この一年…

誰もルシオラの話をしない…

まるで居なかったような扱いだった

横島はそれが嫌だった

ルシオラが守った世界なのに…

みんな忘れている…

その事が、横島をより孤独にしていた…


その時…魔鈴は気がついた

横島を気遣って話さなかったのが、より横島を追い込んでいた事実に…

(ダメですね… 横島さんの力になりたかったのに… 横島さんを傷つけてたなんて…)

魔鈴は心の中で後悔した


だが、これからは踏み込んでみようと……

決めた


「ルシオラさんに会ってみたかったな… きっと素敵な人だったんでしょうね」

魔鈴は横島に笑顔で話した

「あいつは… 俺なんかにはもったいない女でしたよ… 綺麗で…真っ直ぐで…」

横島はそこまで言って言葉が詰まった…

とても言葉ではいい表せなかった


「横島さん…」

魔鈴は横島の表情にみとれていた

愛おしいような…

寂しいような…

そんな表情だった


街はようやく夕日にさしかかろうとした頃…

横島は夕日を見つめていた

「夕日が好きだったんです… 『昼と夜の一瞬のすきま… 短い時間しか見れないから… よけいに美しい…』 あいつは夕日を見ながらこの言葉を言ってました…」

横島は久しぶりにあの言葉を口にした

あまりにつらくて口に出来なかった言葉を…


魔鈴は夕日を見ながら静かに聞いていた…
 
 
「横島さんとルシオラさんが守った夕日を見せたかったですね…」

魔鈴はふと思ったことを言った

彼女は横島とこの夕日が見たかったに違いないと、思ったのだ…

横島は魔鈴を驚きに満ちた表情で見た

「俺も同じこと考えてました… あいつが守った夕日を見せたかった…」

横島は夕日を見ながら話した


「横島さん… ルシオラさんのことで悩んでるなら相談して下さいね…」

魔鈴は悩んだが静かに話した…

自分が何が出来るかわからないし

軽々しく協力するとも言えなかった…


だが、横島が自分を必要とするなら…

求めて欲しかった…


「魔鈴さん…」


横島は魔鈴の優しさに心地よさを感じていた…

ルシオラを失って以来、ずっと悩み苦しみ続けた自分…

それを支えて助けてくれたのは魔鈴だと気がついた…


だが…


ルシオラへの答えも見つからない今

横島は彼女に甘えることは出来なかった…


ただ…

今だけは彼女の優しさに包まれていたかった…


「魔鈴さん… 俺、魔鈴さんには本当に感謝してます。」

横島は自然と微笑んで魔鈴に話した


それは、横島が本来持つ優しい笑顔だった…


いつもの元気な笑顔ではなく…

かつて、ルシオラにだけ見せた

愛情と信頼がこもった笑みだった…


魔鈴は今まで見たことが無いような、笑顔の横島に見とれてしまった…


(これが彼の本当の笑顔なんですね…)

魔鈴は胸の鼓動が高鳴るのを感じていた…

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