新しき絆

「雪之丞…」

横島は驚いた顔で雪之丞を見た

「別に驚くことじゃないだろ? 強いやつと戦えば得るモノも多いしな…」

雪之丞は当然だと言わんばかりの顔だった…

「確かにな…」

横島は雪之丞の言葉に考えていた

強い者と戦う…

雪之丞にとっては当たり前だが、横島は考えて無かった


誰かに頼るのが嫌だし

それに必要以上に人と関わりたくなかった…


だが…

天狗は自分を知らない

人との交流が無いから、第三者にバレる恐れも無いだろう


「雪之丞… 明日行ってみるか…?」

横島はふと呟いた


「ああ、俺はかまわないぜ! 楽しみだからな」

雪之丞はバトルマニアらしくニヤリと笑った


横島はもっと強くなる為のキッカケが欲しかった…



次の日、横島と雪之丞は、先日天狗と出会った場所に向かっていた


「こんな山奥なのか?」

迷いながら歩くのに飽きてきた雪之丞が聞いた


「ああ、この辺なんだがな…」


しばらく歩くとその場の空気が変わった…


「またお主か… 薬が効かなかったか?」

横島と雪之丞が辺りを探すと木の上に天狗がいた


「いや、この前はありがとう。 今日はあんたともう一回戦ってみたくて来たんだ」

横島は真剣な表情で話した


「先日あれほどやられて、また来るとはな…」


天狗は少し呆れていた


「あんた強いんだろ? まずは俺と戦ってくれよ。」


雪之丞は待ちきれないのか気合いを入れていた


「拙者は修行中ゆえ、戦うのはかまわんが、手加減はせぬぞ…」


天狗は雪之丞を睨んだ

「ああ、最初から全力で行くぜ!!」

バシュッ!!

雪之丞は魔装術を展開した


「ほう… 魔装術か…」

天狗は刀を抜き雪之丞に攻撃する


雪之丞の攻撃はどちらかと言えば力任せの攻撃だった

天狗が相手では全く当たらなく、空回りばかりだった…


「カスリもしないとはな…」

雪之丞は息を絶え絶えで言った


スピード自体は見えていた

だが、動きがまるで違っていた


「お主は強い。 だが… 当たらねば意味がない。 攻撃が真っ直ぐすぎる。 読みやすいのだ」

天狗は最小限の動きで戦っていた為あまり疲れてなかった…


雪之丞はすぐにボコボコにされて伸びていた…


「次は俺だな…」

横島は静かに霊力を高めた

そして、両手に栄光の手を出した


「お主も懲りぬな… お主は経験が無さ過ぎる。 せっかくの高い霊力に貴重な能力も満足に使えてない」

天狗は戦う前に横島の欠点を指摘した


「わかってるから来たんだ… 自分が無力なのは嫌ってほどわかってる… だから俺は強くなりたいんだ… 今は他に思いつかないんだ… この命をくれた奴に報いる方法が…」


天狗には、横島の言葉は悲痛な叫びに聞こえていた

そして、深く暗い瞳をした横島を静かに見ていた


「ならば来い! お主の求めるモノは無いが… 力なら見せてやろう…」

天狗は、先ほどまでとは比べ物にならないほどの霊力を解放した


横島はその力に吹き飛ばされそうなのをこらえている


「クッ……」


横島は霊力を解放した天狗に攻撃をしかけた!


天狗は避けようとせず受け止めていた


「そんなもんか? あの魔神を倒したと言う力は…」


天狗は冷静に横島を見つめて話した


「…はぁ…はぁ…、なぜそれを…」

横島は呼吸を整えながら話した


「この場所は魔界に近い… ゆえに人間界の情報には疎いが… 魔界の情報は入ってくる。 ましてあれほどの出来事ならなおさらな… お主があの戦いの後に何を望む…?」


天狗は冷静に横島を見つめている


今日は先日のように、狂気にも似た目はしていなかった…

だが、天狗はしりたかった

あの目の真実を…


「わからねぇ… 俺の望むモノはもう無い… だが… 力が欲しい… 二度と大切なモノを失わない力が…」


横島は強い眼差しで答えた


「よかろう… 時間がある時は来るがいい… 拙者に出来ることなら教えてやろう… だが… お主が全てを見失えば、拙者がお主を殺す…」


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