新しき絆

横島は暗く悲しい瞳で一人呟いた


横島自身、これからどうしたいのか…

いろいろ考えてはいるが、未だにわからなかった…

だが、誰にも本心を見せる気は無かった……


「ルシオラ… 俺はどうしたらいいのかな… 会いたいよ…」

横島の声にならない呟きは誰にも聞こえなかった



横島は魔鈴を助けれられた喜びと…

ルシオラを助けられなかった悲しみの中帰っていった…



何気ない1日

ほんの些細な出来事だが…

横島と魔鈴にとってこの日は特別な日となる……




それから一週間が過ぎていた…


魔鈴は普段は昼はお店に、夜は魔法の研究か除霊にと忙しい毎日を過ごしていた

横島とはあの日以来会っていない

横島の性格なら、すぐにでも食事に来るかと待っていたが、全く来なかった…


忙しい日々だが…

たまにふと思い出すのは、あの日の横島の表情だ…


魔鈴は横島からもらった文珠を眺めて、考えこんでいた


そこに使い魔の黒猫がやって来た

「横島さん、来ませんね… お礼がしたいんですが…」

魔鈴は困ったように使い魔の黒猫に話しかけた


「忘れてるんじゃないのかにゃ? あんまり頭良さそうじゃないにゃ」

黒猫がそう話すが魔鈴は首を傾げて悩む…

「やっぱり私が、横島さんに嫌われてるのかしら?」

魔鈴は寂しそうに呟いた

魔鈴の美しい容姿に声をかけてくる男はたくさんいた

だが、魔鈴が魔女だと知ればみんな離れて行った…


魔鈴の異界の家などの、変わった趣味も原因なのだが…

魔鈴は気がついてない……


「あの女好きな男が魔鈴ちゃんを嫌う訳無いと思うがにゃ~」

黒猫は心配そうな魔鈴を不思議に見ていた

魔鈴はため息をつきつつ…

結局横島が来る日を待っていた



一方横島は…


一応魔鈴の店に行く約束は覚えていたが…

横島自身、困った存在を助けるのはよくあるが、お礼をされたり言われたりするのはあまり無かった…


最近ではタマモを助けたが、素直じゃない性格な為、横島がわかる形でお礼をしていなかった

一応タマモはお礼をしたつもりだったが、鈍感な横島は気がつかなかった


それに令子にいたっては、助けるのを当たり前だと思っており、お礼すら言わない…


最近横島が助けてお礼を言ったのはおキヌ以外では、ルシオラ達姉妹や、化け猫のミイ・ケイの親子くらいだった…


そんな環境の横島にとっては、魔鈴にお礼の言葉を言われただけで十分であり

あの程度助けたくらいで更にお礼をしてくれるとは本当に思っていなく

優しい魔鈴が横島を気遣って言った言葉だと思っていた…


それに今の横島は昔と違って、厚かましくセクハラやアプローチをする気は無く…


自分から積極的に魔鈴に会いに行くつもりは無かったのである


環境のせいもあるとはいえ、あまりに不幸慣れしている横島だった…



そうしてあの日から2週間

横島と魔鈴はお互いを誤解しており

会うことなく過ぎていた……


そんな日、魔鈴がついに動き出した…


あれから2週間…

さすがに遅すぎる…


やはり嫌われてるかもしれない…


でも…

命を助けてもらったお礼はしなくては…


魔鈴はせめて料理を作って横島のアパートに持って行ってあげようとしていた


すぐに帰ってくれば迷惑では無いだろう


優しい魔鈴は2週間ずっと考えていた結果だった……


魔鈴は夕食にと横島が好きそうな肉料理を中心に多めに作った

そして出前用のバスケットに入れて、夕方に横島のアパートに向かってホウキで飛んでいった


魔鈴はアパートに着いてドアをノックする


コンコン…


「開いてるよ」

少しぶっきらぼうな声が中からした


(今の声は横島さんではないですね…)

魔鈴が首を傾げてドアを開けると…


雪之丞がテレビを見ていた

「あなたは… 雪之丞さん」


「あれ、あんた… 魔鈴!?」


魔鈴と雪之丞はお互い驚いて顔を見合わせた


「まあいいや、とりあえず上がれよ」

雪之丞は横島の家なのに勝手に魔鈴を中に入れた
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