GS魔鈴 新しき絆・番外編ピートの決断

それから時は過ぎて1月後半になる頃、唐巣の教会を美智恵が訪れていた


「どう? 決心してくれたかしら?」

一年かけて何度か勧誘して来たピートのオカルトGメン入りを、美智恵はそろそろ決めたいと思っている

社会奉仕の精神もあるパンパイアハーフのピートならば、人間よりも長期に渡って働けるのだ

日本にオカルトGメンを定着させる意味でも是非欲しい人材だった


「すいません。 まだちょっと決めかねてます」

困ったように頭を下げるピートに、美智恵は若干違和感を抱く

以前は去年の11月頃に話し合ったのだが、あの時はもう少し前向きに答えていたのだ

今のピートの口調だと新たな悩みがあるようにも感じる


「何か悩みがあるなら相談に乗るわよ? あなたがオカルトGメンで活躍すれば、世界中にいる吸血鬼の同胞達の地位や立場も良くなるはずなのよ」

美智恵はピートの悩みを聞きながらも、揺さぶりをかけていく


実はピートのオカルトGメン入りには、個人的な理由もあったのだ

貧富や国境の違いにかかわらず働きたいという想いとは別に、世界中に僅かに残る吸血鬼の地位や立場を確立して人間と共存出来るようにしたいと言う理想もあったのである

ブラドー島や世界各地に隠れ住む吸血鬼は、常に人間に襲われる危険の中で生きて来た

吸血鬼と言うだけで命を狙われる事が無いように、人間と共存出来る道を探していたのだ


そんなピートの理想を知っていた美智恵は、オカルトGメンでピートが活躍する事で吸血鬼の地位や立場は良くなるはずだと説得していたのである

無論それが一つの可能性でしかない事はピートも理解しているが、現時点では一番可能性の高い方法だろうと思いオカルトGメン入りを考えていたのだった


「それはわかってます。 でも、もう少し考えたいんです」

美智恵の硬軟合わせた言葉に、ピートは申し訳なさそうに謝るのみである


(美神さんの考えは理解してますが、僕は横島さんの未来を見てから決めたい)

頭を下げたままでピートは美智恵の思惑をある程度理解していた

確かに長期的に見ればピートのオカルトGメン入りは、吸血鬼にとってプラスだろう

しかしそれは数十年や百年単位での話である

少なくともピートには、今焦ってオカルトGメン入りする理由は無かった


まあ人手不足に悩む美智恵には悪い気もするが、バンパイアハーフである自分を気にしない数少ない友人である横島やタイガーとの関係の方が、ピートには遥かに大切である


「そう……、じゃあ話の続きは日を改めましょう」

ピートが何に悩んでるのか気になる美智恵だが、流石にこれ以上踏み込んで聞く訳にもいかなかった

見た目や態度から普段はあまり感じないが、ピートは700年生きているのだ

そのため最低限の年上に対する敬意を忘れなかったのである


(あと一歩ね)

この時迷いや悩みはあっても、ピートのオカルトGメン入りは変わらないだろうと美智恵は思っていた

基本的にお人よしな性格だし、目的を考えればオカルトGメンが最適なのは明らかなのだ

まあ実のところ美智恵は、吸血鬼と人間の関係はあまり興味が無い

と言うか自分が現役の時には変わらないだろう事は明らかなのだから、明らかに他人事だった
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