GS魔鈴 新しき絆・番外編ピートの決断

忙しい年末年始をなんとか乗り切ったピートは、冬休みが終わり3学期になっていた

教室では大学受験をする者がピリピリした様子で勉強をしており、就職をする者達も気を使って静かにしている

そんな中でピートは、ぼうっと眠そうにあくびをする横島を見ていた


(意外と嘘が上手いんですね)

以前と全く変わらない横島の様子に、ピートは驚きながらも感心している

よく馬鹿で何かあればすぐに顔に出るとからかわれていた横島だが、魔鈴の事や令子の事務所を辞める事など考えてる気配も見せない

年末に二人が一緒に居たところを見てなければ、疑う余地もなかった


ちなみに元々の横島の学校での態度は、バイトの時と比べればかなり大人しい

ふざける事はあるがクラスメートにセクハラをする事は無いし、セクハラ紛いの言動をしても限度を持っており普通のレベルだった


(横島さんってクラスメートに距離を空けてますよね。 よく考えてみたら相手によって態度を使い分けてた気がする)

今まで気にしなかった横島の僅かな変化に、ピートの思考は深まっていく

非常識な行動が目立つ為に誰も気にしなかった横島の行動だが、元々学校では授業中に寝る意外は結構普通だったのだ


(三年になって学校に毎日来るようになった事や、勉強してる事も関係あるのかな?)

何時からかわからないが、横島は学校で真面目に勉強をしていた

無論二年まで全く勉強しなかった横島が授業をわかるはずもなく、散々馬鹿にされていたが

それでも勉強しようとする姿勢は変わらなかった

実際テストは最後まで赤点ギリギリだったので特に目立たなかったが、今思えば何かの心境の変化にも見えなくもない


(考え過ぎかな~)

いろいろ考えたピートだが、思わず苦笑いを浮かべてしまう

深く考えたはいいが、実際横島がそこまで考えてるとは思えない

ただ単に魔鈴と恋人に近い関係になっただけだと考える方が、遥かに自然である


(美神さんもキツいですからね)

好きな人が出来れば令子との関係も変わるだろう

元々横島が令子を求めるからこそ、成り立っていた関係なのだ

まあ素直じゃない令子が横島から求めるように、上手く横島をコントロールしてたとも言えるが……

(ただ、あの時の表情がね……)

あの時の怒りや複雑そうな表情が気になるピートだが、それ以外は一切確証が無かった


そして時間は過ぎて行き昼になるとクラスメートが弁当を食べる中、横島はコンビニのおにぎりが二つだけ

二年の時に比べれば豪華な昼ご飯になっているが、基本的に横島が食べるのはおにぎりか菓子パンくらいである


(やっぱりわからないな)

普通におにぎりを食べる横島の姿に、ピートは己の考えが正しいのか考え過ぎなのか全く判断がつかなかったが、それは仕方のない事だった

あれだけ一緒に居た令子やおキヌ達をずっと騙していた横島の演技を、ピートが見抜くのは無理である

妖狐のタマモですら違和感以上の確信が持てなかったのに、横島と一緒に居る時間が少なかったピートが気付くのは不可能だろう


結局ピートは、横島の様子を見守る以外にする事が無いままだった

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