「魔鈴さん、除霊は終わりましたよ」

軽い口調の横島に声をかけられて魔鈴はハッとする


「お二人共強いですね…」

さきほどの驚きが収まらぬ魔鈴は、思わずつぶやいていた


「アハハッ、魔鈴さんは優しいっすね～　雪之丞はともかく俺はただの半端者っすよ」

魔鈴の言葉を素直に受け取れない横島は笑ってしまう

魔鈴の言葉は優しさからの言葉だと思った横島は、褒められたのはお世辞だと決め付けてるようであった


「相変わらずだな…　お前」

雪之丞は少し呆れたような視線を横島に向ける

あまり他人の感情に敏感でない雪之丞が見ても、魔鈴は素直な感想を言ったに過ぎないと思うのだ

それなのに自分が褒められたのを、心から否定してしまう横島にかける言葉め浮かばない


「何が相変わらずなんだよ？」

「お前に話しても理解出来ねえよ」

不思議そうに問い掛ける横島に、雪之丞は何も語らなかった


（何を言っても無理だろうよ…　自分が一番許せないんだから）

雪之丞は横島を見ながら心でつぶやく

今までの環境や令子の影響も大きいのだろうが、ルシオラを犠牲にした自分が一番許せない横島を思うと、雪之丞にはどうしようもなかった



「横島さん…」

一方魔鈴は、自分の言葉が素直に受け取ってもらえなかったことが悲しかった

元々お世辞などはほとんど言わない魔鈴は、いいことはそのまま褒めるし、悪いこともそのまま指摘する

良くも悪くも真っすぐなのだ

そんな素直な言葉を信じてもらえなかったのは、魔鈴としては悲しかった


「とりあえずさっさと後始末しちまおうぜ。　原因探すんだろ？」

微妙にすれ違う空気に言葉が途切れた横島と魔鈴を見て、雪之丞は話を仕事に向ける


「ええ、そうですね。　原因を探して、後は建物内の陰の気を中和しなければダメですね」

雪之丞の言葉に頭を切り替えた魔鈴は、横島達と手分けして民宿内を調べてゆく

その後、特に異常や原因が見つからなかった為、今回は偶然悪霊が住み着いたものだと結論を出して終わる


そして最後に、建物内の陰の気を外と同じレベルに中和する為に掃除をして、今回の除霊は終わることになった

もちろん極端に陰の気を減らして、外とのバランスを崩すほどの掃除はしない


悪霊の集まり安い環境を改善することも普通のＧＳはするのだが

普通のＧＳが高価なお札を使い溜まった陰の気を浄化するのを、魔鈴は魔法と掃除で陰の気を浄化していた



こうして横島と魔鈴の初仕事は、大きなトラブルもなく順調に終わる

心配そうに外で見守っていた老夫婦だが、見事に除霊された民宿を見ると涙を浮かべて喜んでいた



そしてその日横島と雪之丞は、魔鈴と一緒に夕食を共にしてから帰っていく

二人が帰った後、魔鈴はＧＳ協会に提出する報告書を書きながら、今日を振り返っていた


（横島さん、聞いてた話とずいぶん違う印象でしたね）

魔鈴が気になったのは何故か横島のことである

馬鹿でスケベでどうしようも無い横島

暗く悲しみに満ちた瞳をしたあの日の横島

そして今日は明るく普通の青年のような横島であった