新しき絆・2

時は少し遡り、令子が横島のアパートに向かった頃


美智恵は出勤のために車を走らせていたが、その表情には疲れが残っておりさすがの美智恵も顔色が悪い


「とりあえず令子の事務所へ行かなくちゃね…」

昨日の後始末や今後の対応の為、まずは令子に詳しく事情を聞かなければならないのだが


「問題は横島君の方なのよね…」

美智恵の頭は横島の件でいっぱいであった

横島と魔鈴の引き離し工作はあれこれやったが、全て失敗している

2人の親密さは美智恵の予想を遥かに超えていた


「女好きとはよく言うけど、実際に手を出さないのよね… そもそも男ってみんな女好きだし、女癖の悪さで言ったら西条君の方が酷いわ」

ふと横島と西条を比べてみる美智恵

令子はまるで横島が女の敵みたいに言うが、実際の行動を見れば真逆である


セクハラ癖はあったが、あれは自分より立場の弱い人間にはしないし

止めてくれる人にだけしていたような事実がある

だが西条は違う、隠れてあちこちで不特定多数の女性と関係しているのを美智恵は知っていた


「どうやら私はまだ横島君を甘く見てたみたいね」

美智恵としては十分評価しているつもりであった

しかし問題なのは美智恵と横島は接点が少ないこと

横島に関する周りの評価や情報は当然知っている

それゆえに、横島のことを甘くみる原因になっていた

横島の本質や内面を知るほど、美智恵は横島と親しくは無いのだ


「マズいわ… このまま卒業と同時に事務所を辞められたら、令子と横島君は完全に切れてしまうわ」

美智恵は横島の今後の行動をある程度予測していた

卒業と同時にタマモとシロを連れて辞めるだろうと…

どう考えても、横島が事務所に残る理由やメリットが見つからないのだ


「絶対にあきらめないわ!」

残り少ないタイムリミットの最後の最後まで諦めない

美智恵は一か八かの賭けに出ようと考えていた



だが…


この時、すでにタイムリミットが切れていたのを美智恵は知らない

同じ時、令子は小鳩から魔鈴の存在を聞いてしまっていたのだ

美智恵が最後の最後まで隠し続けた

決して令子には知られてはいけない事実を、とうとう令子に知られていたのだ


最後の最後まで後手に回った美智恵は、気合いを入れて令子の事務所に向かう



その頃、横島と魔鈴は何故か目を覚ましていた


「やっぱり今日みたいだな…」

「ええ、この感じ… 間違い無いと思います」

2人は胸騒ぎを感じて目を覚ましていたのだ

横島と魔鈴の霊感が、運命の日を告げるように…


54/64ページ
スキ