新しき絆・2

反対する3人の言葉に横島は腕を組み悩み始める

「しかしな… ケリをつけなきゃダメだと思うんだよな~ 本当は卒業式後に行こうと思ったんだけど、タマモとシロを連れ出した以上美神さんも黙って無いだろうし… それに隊長が余計な事する前に先手を打ちたいんだ」

悩みながらも自分の考えを伝える横島

令子のやり口を誰よりも知るがゆえに、先手を取り堂々と別れを告げるつもりである

自分に逆らった者に対しては容赦しない令子だが、正式に筋を通して別れればその高すぎるプライドゆえに何も出来ないと思っていた

令子と決別さえ終えれば美智恵も何も出来ないだろうと横島は予想しているのだが……


(やっぱり横島の考えは大事な部分が抜けてる。 美神の気持ちが… そして美智恵の執念が…)

タマモは横島の言葉を聞いても反対は変わらない

ケリをつけるのも必要だし、美神親子相手に先手を打つのは有効ではある


だが、タマモは恐れているのは令子の気持ちだ

もし令子が土壇場で自分の気持ちに気が付いて、その隠された深い愛情が憎しみに変われば…

(美神は何があっても横島と魔鈴さん、それに私とシロの幸せを潰そうとするわ)

タマモが考えてるのは最悪の事態である

可能性としては横島の予想よりかなり低いだろう

しかし、この数ヶ月令子を観察してきたタマモはその不安が消えない


(ダメだわ。 どうしても決定打に欠ける)

何度考えても美神親子に対する最後の決め手が見つからず悩むタマモ


そう…

タマモも一つ大切なピースを知らない

大樹と百合子が裏で横島と魔鈴やタマモ達を守っていた事実を知らないのだ

そのため、今の自分達だけで美神親子と対立するのは危険が高すぎるとタマモは思っていた



そんな横島やタマモを見てシロも悩んでいる

(先生は気付いてないでござる。 あの事務所は先生が居てこそ成り立っていたでござる。 先生はなぜ自分の事をあれほど軽く見るのでござろうか…)

一番なにも知らないシロだが、一つ理解していた

それは横島の存在は本人が思うより遥かに重く重要だと言うこと

それが無い横島の考えにシロは本能的に不安を抱いていた



「とりあえず、今日は休みましょう。 みんな疲れてるようですし、まずは疲れを癒やすのが大切です。 その話は明日もう一度相談しましょう」

結論が出なくて少し重い空気を変えるように、魔鈴は笑顔で立ち上がる


(美神さんはともかく、美智恵さんは私達では難しいようです。 明日、朝一番でお義母さんに相談するしかないですね)

魔鈴は今日雪之丞から聞いた話などで、美智恵がかなり危険だと知っている

その為、結論は百合子の意見を聞いた後がいいだろうと思いこの日は休むことにしていた


「そうね… まずは体調を整えるのが先ね。 特に横島は飛行機の中でかなり霊力使ったもんね」

タマモも一旦考えを止めて魔鈴の意見に賛成する


「じゃあ、夜が明ける前に寝るか」

魔鈴は明日も店があるし、横島も卒業の準備などで学校がある

横島もこれ以上考えるよりは休んだ方がいいと判断した


そうして、結論を明日に持ち越しにした横島達は遅い就寝につく

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