新しき絆・2

魔鈴がタマモとシロの部屋の用意を終えた頃、横島が帰って来た


「う~、寒いな~」

流石に深夜の飛行は寒かったようで、少し震えた横島がリビングに入って来る


「お帰りなさい、横島さん」

ホットミルクを片手に魔鈴が笑顔で横島を迎えた

どうやら横島がいつ帰って来てもいいように温めていたようだ

しかも深夜な為、カフェインの無いミルクにしたあたり魔鈴のさり気ない優しさが見える


「ありがとうございます」

ミルクを受け取った横島は、冷えた体を温めるようにゆっくり飲み始めていく


「あっ、そうだ。 タマモとシロの事っすけど、今日からここに住んだ方いいみたいなんすよ」

「わかってますよ。 空港で雪之丞さんに会いましたから。 この後は美神美智恵さんを監視するとの、雪之丞さんからの伝言です」

魔鈴がタマモ達が帰れないのを知らないと思って説明しようとする横島だが、すでに知っていた魔鈴は少し笑みを浮かべて答えていた


「あっ、知ってたんですね」

手際がよく影であれこれ動いてくれる雪之丞に、横島は心から感謝を感じる
 
 
「タマモ、シロ。 明日お前達を連れて美神さんに別れの挨拶に行こうと思うんだが…」

ミルクで一息ついた横島は、眠そうにウトウトしていた2人に明日の予定を相談し始めた


「えっ… 危険なのにわざわざこっちから行くの?」

横島の話にタマモは驚きを隠せない

それは魔鈴とシロも同じで、目が覚めたような表情で横島を見つめた


「俺もいろいろ考えたんだが、理由はなんであれ結果的にお前達は美神さんに世話になってたしな。 相手が非常識だからってこっちも合わせる必要無いだろ? きちんと別れの挨拶はした方がいいと思うんだ」

真剣な表情で自分の考えを説明する横島だが、魔鈴達はあまりいい顔はしない


相手はあの美神令子なのだ

まともな話が出来るはずは無いと魔鈴達は確信を持っていた


「横島、危険すぎるわ。 あなたが辞める話だけでもどうなるかわからないのに、私達まで連れて行くなんて美神は許さないわ」

「そうでござる! 美神殿はキレたら何をするかわからないでござる!」

タマモとシロは険しい表情で反対するが

「俺は、たかが見習いのバイトだろ? シロは長老の手紙があれば問題無いし、タマモは元々しばらく世話になるって約束だったしな。 美神さんの性格なら去る者を追えないと思うんだが……」

横島は横島なりに考えた意見であった


美智恵はともかく、令子はその性格ゆえに別れを言えば止めはしないだろうと予想している

キレたりしても自分が2人を守れば、逃げるだけなら問題無いだろうと思っていた


それにこのまま姿をくらました2人を、令子や美智恵が人間を襲ったなどとでっち上げて除霊対象にするのを心配していたのだ


「横島さん、やはり危険すぎます」

今回は魔鈴も反対にまわる

横島の話は一見問題無いように聞こえるが、肝心なことが抜けていた


そう…

令子の気持ちを横島は知らない


横島はタダのバイトだと思ってるが、令子は違うのだ

普段の態度とは裏腹に横島を心から求めている


横島の考えにはそこが無い


魔鈴達が反対する理由はそこである


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