新しき絆・2

その少し前

横島達が食事を始める頃、令子と西条は羽田に到着していた


避難した空港関係者達もすでに空港に戻っているが、もう飛行機の運行時間は終わっている為、最低限の関係者しかおらず空港はひっそりとしていた


「マスコミは居ないみたいだな… まあ被害も無かったしな」

西条はあれだけいたマスコミ関係者が居ないのに少し驚いていたが

被害が無い上、原因不明のトラブルとしか発表されてない現状では当然かと思う


「本当に災難だったわ」

疲れた表情で愚痴をこぼす令子

彼女はこの疲労とストレスをぶつける相手が居ないので不機嫌である


「ちょっと待っててくれ。 先生を探して来るから」

西条は令子をロビーで待たせて美智恵を探して走っていく


1人残された令子は、ため息混じりに今日の事を思い出す

(横島のやつ、最近どうも勝手な行動が増えたわね。 何も考えないでその場の勢いで行動するんだから…)

令子は今日の横島の様子を思い出して、自分に逆らった原因を考えている


(まあ、情に流されたんでしょうけど… あいつはいつもいつも……)

どうせCAの女を見捨てられずに脱出しなかったんだろうと令子は思う


美人に弱く惚れっぽい

そんなイメージの横島を思い出すと、ムカムカや怒りはどんどん増して来る


「とりあえず次に会った時にシメとかないとダメね… 今回の成功で調子に乗ったら面倒だわ」

感情で面白くないのもあるが、プロのGSとして除霊と飛行機の着陸の両方は不可能と判断した令子

今回の横島の行動はその判断に逆らう物であった

あんな無茶な事を続けるようでは、命がいくつあっても足りない

もし、次に同じような事があれば横島は死んでしまう

自分の力量で解決出来ない事まで首を突っ込む横島を、令子はまだまだ半人前だと決めつけていた



そんな思考の中、ふと気が付くと遠くから近づく足音が聞こえてくる

令子が顔を上げると、西条が美智恵とおキヌを連れて来ていた


「いろいろ事情を聞きたいんだけど、今日は遅いし帰りましょ」

顔を見た途端に何か言いたそうな令子に、美智恵は苦笑いしていた


「ママ、横島達は?」

令子はこの場に居ない横島達3人が、何処に行ったのか理解出来ない


その言葉に微妙に反応したのは美智恵とおキヌである

美智恵は一瞬不愉快そうな表情をし、おキヌは今にも泣き出しそうなほど辛そうな表情になった


「彼らは先に帰ったわ。 夕食を食べに行くそうよ」

すぐにいつもの表情に戻った美智恵は平然と伝える


(今、令子に知られたらマズいわね。 令子がキレたらタマモの思うつぼだわ)

美智恵は心にある怒りを沈めて平然を装う


タマモには令子にバラすと脅迫したが…

実際今、令子が魔鈴と横島の関係を知ってキレたら、全ての努力が水の泡になる

自分より魔鈴を選んだ横島を、令子は許さないだろうと美智恵は思っていた

そして一度壊れた関係は二度と元には戻らないのも良く理解している


(急がなくては… 令子に気付かれる前に魔鈴やタマモと横島君を引き離してしまわないと…)


美智恵はどんなに不利になろうと、最後の最後まで諦めない

それが、アシュタロスから娘を守った美智恵の強さなのかもしれない
44/64ページ
スキ