新しき絆・2

無人の空港で再会を喜ぶ横島達

初対面の魔鈴と銀一の挨拶が終わったところで歩き出す


銀一はマネージャーに電話をするが、別行動だった銀一が先に帰宅したと思ったマネージャーはすでに帰っていた


「銀ちゃん迎え来るんか?」

「いや、断った。 明日も早いしな、マネージャーも今からだと大変やからな」

空港の出入り口に向かって歩きながら、どうやって帰ろうか考える横島と銀一


「良かったら私の家で一緒に食事をして行きませんか?」

2人の会話を聞いていた魔鈴は銀一を食事に誘う

久しぶりに会ったのだから食事くらいはして行けばいいと思ったのだ


「いや~、こんな夜中に突然押しかけても、迷惑かかるし遠慮しとくわ」

銀一は少し悩むが常識的に考えて断る


「私は大丈夫ですよ。 せっかくですから是非いらして下さい」

「銀ちゃん、食ってけよ。 魔鈴さんのご飯はめちゃくちゃ美味いぞ!」

遠慮する銀一に魔鈴と横島は笑顔で食事を誘っていく


「そうか… じゃあ、せっかくやから行こうかな」

結局、銀一は横島と魔鈴に押し切られる形で行くことを決める

横島達はそんな和やかな会話をしながら、空港を後にして行った




一方横島達より少し遅れて美智恵と別れたおキヌは、相変わらず空港内部をふらふらと歩いている


その表情はあまりに元気が無く、顔色も悪い

おキヌは混乱する思考と激しく痛む心で普通では無かった



そんな時、突然おキヌの足が止まる


「えっ……」

混乱する思考も痛む心も、全てが一瞬で止まってしまった

頭が真っ白になるとはよく言うが、おキヌの場合は頭だけで無く心も真っ白になってしまう


それだけ目の前の光景が信じられない物だった


「よ…よこしま…さん…」

おキヌの視線の先には空港を後にする横島の姿がある


しかし、おキヌに衝撃を与えたのは横島では無い

隣に寄り添うようにいる女性…

ここに居るはずの無い女性…


「魔鈴さん…?」

全てが真っ白になったおキヌは、何も考えることが出来ないままつぶやく

周りの景色も、一緒に居るタマモや銀一でさえも、目に入ってない

まるで映画やドラマのワンシーンのように、去りゆく横島と魔鈴の姿だけが記憶に鮮明に残る


目の前の光景も鮮明に残る記憶も受け止めることが出来ないまま、彼女はその場に立ち尽くす



そして、そんなおキヌの様子を遠くから見つめていた人物がいた


「見ちまったみたいだな…」

複雑な表情で静かに見つめていたのは雪之丞である

美智恵が現れるのを待っていた雪之丞は偶然おキヌを見つけて、魔鈴に鉢合わせするとマズいと思い、そのまま見張っていたのだ


『俺だ、おキヌが横島と魔鈴さんのことを見ちまった。 恐らく美神令子に伝わるのは時間の問題だろう』

『問題無いわ。 どうせタマモちゃんとシロちゃんを保護すれば、事実の発覚は避けられないもの。 決着の時なのよ…』

雪之丞が電話している相手は百合子である

この後、雪之丞は百合子達と合流して美神親子の行動に対応することになった

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