新しき絆・2

「おキヌちゃんは令子が来るまで待ってる?」

美智恵は残るおキヌに笑顔を作り問いかけた


「はい…」

おキヌには現状が理解出来ないでいる

美智恵とタマモまで様子がおかしい

そんな事態におキヌは何が何だかわからないのだ


「私はもう少し関係者と打ち合わせがあるから、ロビーで少し待っててちょうだい。 令子が来てから一緒に戻りましょ」

美智恵はそう話して足早に関係者の後を追う


残されたおキヌは、どうしていいかわからず空港内をトボトボと歩く


空港内は閑散としている

一般人はみんな避難しており、現在空港にいるのは最低限の関係者のみ

おキヌ達の他の乗客はすでに帰ったらしく、本当に誰も居ないのだ


そんな静まり返った空港は、おキヌを更に孤独にし苦しめる

(何がどうなってるか全くわからない…)

おキヌは思い出せることをいろいろ考えてみるが、どれも満足な結論にはならない


令子が居て

横島が居て

そして自分が居る


おキヌにとっては、人生の全てと言っても過言では無い


そんな幸せだった世界

それが気が付いたら全く違う形になっていた

絶対に変わらないと思っていた日常なのに…



度重なる衝撃に、おキヌの心は悲鳴をあげている


おキヌにとって令子は憧れであり、横島は大好きな人

令子と横島の関係はおキヌの理想

そんな彼女には信じられない現実であった



その頃令子は、西条の車で都内を走っていた


「令子ちゃんが失敗した相手を横島君が除霊するとはね… 珍しいこともあるな」

西条は令子と合流してから、事態の説明を受けている

そんな令子は、西条には除霊に失敗したと告げていた

まさか自分は飛行機を救うのが無理だと判断して、脱出したとは言えない


あの時の判断は今でもプロとして正しいと思うが、横島が飛行機を救った現状では説得力など無いのだ

第一、あんな一か八かのバクチで人助けなどしていたら、命がいくつあっても足りない


令子はそう理解しつつ、胸に湧き上がる怒りを必死に抑えて空港に向かっている



ここで時は少し戻る


横島達の無事を喜んだ魔鈴と雪之丞は、横島達と合流すべく空港内部に入って待っていた

幸い空港内はほとんど人が居なく、魔鈴と雪之丞は目立たない場所で横島達が現れるのを待つことにする


「どうも、横島達が事故を防いだらしいな…」

雪之丞は百合子からの連絡でおおまかな事態の様子を知った


「横島さん達がですか?」

魔鈴はその情報に驚き問いかける

なぜ横島が飛行機事故を防いだのか、魔鈴には分からなかった


「原因は悪霊らしい。 横島が悪霊を退治して、飛行機を操縦して下ろしたみたいなんだ」

さすがに雪之丞も驚きながら魔鈴に説明する


「本当なんですか? 横島さんは飛行機の操縦出来たんですね…」

魔鈴はあまりの事態に信じられないようだ


「横島の母親の情報だからな。 情報は正確だろうさ。 飛行機の操縦は文珠だろうな… あいつが飛行機を操縦出来るなんて聞いたことが無い」

魔鈴は雪之丞の説明に驚きながら聞くが、雪之丞の情報元が百合子なのにも驚いている


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