新しき絆・2

美智恵は笑顔を崩さず横島からタマモとシロに視線を移す


タマモは我関せずと言った表情だが、シロはその場の空気を探るように警戒している


(シロも全く知らない訳では無さそうね…)

美智恵は2人を見て、今日自身が得た情報と現状の確認をしていく

タマモは相変わらず何も表情に表さない為わからないが、シロは微妙に表情に出ている

タマモと違い、子供で素直なシロの表情は美智恵にはバレバレであった


一方タマモは美智恵の微妙な変化に気が付いている

(何…? 前と違う。 明らかに私を見る目が…)

タマモの超感覚が美智恵の視線に警戒を促す


「用件はそれだけですか? なら俺達は帰ります」

横島の言葉に返事をせず笑顔でタマモとシロを見つめていた美智恵に、横島は言葉を続けて話を終わらせようとする


「もう一つあるのよ。 少し厄介な事件が起きててね。 シロとタマモに協力して欲しいの」

美智恵は笑顔が真剣な表情になり横島達に問いかけた


その言葉に横島とタマモの緊張感は一気に高まる

美智恵がシロとタマモの件を、令子の居ない場所で話すのは不自然なのだ

表向きは令子の事務所に暮らしてるのだから…


(やっぱりタマモとシロが、俺に協力してるのがバレてるな)

横島は美智恵の意図を理解した


「イヤよ。 何で私とシロがあなたの仕事を手伝わなきゃならないの?」

険しい表情で横島より先に否定したのはタマモだ

タマモは美智恵の言葉を、横島よりもっと深い意味まで理解していた


それは脅迫に近い意味を持つ言葉

素直に言うことを聞かないなら、遠慮はしないと言う警告の意味を隠し持つ


昼に空港で入った雪之丞からの情報

それに先ほどの視線

それらを合わせて考えればタマモは、自分とシロが美智恵にとって邪魔な存在だと確信している


そんな自分達に、美智恵は従うか敵対するかの選択を迫っているに等しい


「そう、なら令子に相談してみるわ」

美智恵は表向き気にしない素振りを見せてタマモを見た


(本格的に魔鈴の味方なのね…)

美智恵は内心苦々しくタマモを思う


美智恵は未だに横島の真実を知らない

ゆえに、横島が美智恵や令子を嫌ってるとは思ってないのだ

ただ、タマモは魔鈴の味方になったと理解した


そして令子に相談する

それはつまり、タマモ達が隠している事をバラすと言う意味を持つ


「好きにすれば? 私達はもう行くわ」

タマモは美智恵を冷たい視線で射抜き、横島を引っ張って歩き出した


「失礼します」

横島は美智恵とすれ違う時、軽く頭を下げて行く

そしてシロと銀一は無言で美智恵に頭を下げて続いて行った



(そう… それがあなたの答えね)

美智恵は、タマモの最後の視線に怒りを感じながら見送っていた


そして残ったおキヌは、こちらに向かっている令子を置いて横島達に付いていくことは出来ずに、その場を動けないでいた

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